レトロな佇まいを残す近江鉄道・鳥居本駅のホーム

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(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長)

余力のあるうちに再生に着手した近江鉄道

1.ローカル線の「延命」と「再生」

 ローカル線の存続問題は単なる移動手段の問題だけでなく、地域の存続をどのように考えるのかに密接に関係する。

 高齢者や高校生に代表されるように、全ての人が運転免許を保有し、自分が使える自動車を持っているわけではない。鉄道は、こうした人々の移動を支えることで、安心して定住ができる環境を提供する。

 また、線路の先にある大都市と結びつくことで、地域間の人々の移動だけでなく、文化の共有などの心理的な繋がりが維持されている。

 ローカル線存続の打ち手の一つが、この連載の②で紹介した「上下分離方式」である。

 ここで注意して欲しいのは、ローカル線の「延命」の方法として上下分離方式が導入されたとしても、ローカル線が抱える厳しい状況に対して手を打たないと、いずれは廃線の危機を再び迎えることが想定されることである。上下分離方式を導入することで、ローカル線の「延命」ではなく「再生」を行い、地域を支える役割をしっかりと担えるようにすることが望ましい。

 そのためには、ローカル線に利用促進等に取り組む余力が残っているときに上下分離を行うことが期待されている1)

 ここでは、「延命」ではなく、「再生」をめざすローカル線におけるリーディング・プロジェクトとして近江鉄道線の再生プロセスを紹介していきたい。

 なお、この連載では、鉄道路線としての近江鉄道について「近江鉄道線」、鉄道を運営する会社については「近江鉄道」と記載している。