JR九州の観光寝台列車「ななつ星」。この豪華クルーズトレインを手掛けたデザイナーが、国交省の提言にイラストを寄せた(写真:アフロ)

【近江鉄道「血風録」シリーズ・プロローグはこちらから】
◎地域鉄道の96%が赤字…コロナ後のローカル線にいったい何が起きているのか?
◎鉄道事業はまるで“鈍重な牛” 激変期のローカル線「存続」の打ち手はこの2つ

(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長)

動き出したJR、そして国交省

1.コロナ禍を契機としてローカル線存廃問題が急浮上

 コロナ禍の真っただ中だったが、何度も東海道新幹線で東京と京都を往復した。車内を見渡すと、1車両の乗客は毎回のように一ケタ台だった。

 この新幹線が運ぶ人々の運賃収入が、赤字の鉄道路線を支える原資となっている――。

 そのことを想像すると、このまま全国の地方ローカル線を維持しようとすることの厳しさを痛感した。

 この状況に、やはりJR各社も危機感を高めた。輸送密度(平均通過人員=1日1kmあたりの利用者数)が少ない線区について、鉄道での存続が厳しいことを表明し始めた。

 例えば、西日本旅客鉄道(JR西日本)。国交省有識者会議の場で「輸送密度が2000人/日未満の線区は、大量輸送機関として、鉄道の特性が発揮できず、このままの形で維持していくことは非常に難しい」(第1回鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会、2022年2月14日)とはっきり記した資料を示した。

 それは、自社での存続は困難であること、そして鉄道にこだわらずBRT(バス高速輸送システム)など別の移動方法を導入することについて検討を進めることが望ましいとの姿勢を明確に表明するものであった。

 もう待ったなし。そして、国土交通省も動き出した。