廃線から時が止まったようにたたずむ名鉄三河線・旧三河広瀬駅。ノスタルジックな雰囲気で写真撮影の人気スポットに(写真はいずれも桑本氏提供)

 赤字ローカル線の存廃をめぐる動きが加速している。4月21日には、国会で改正地域公共交通活性化再生法が成立。今後進展する国・沿線自治体・鉄道事業者による再編協議の末に、廃線に至る路線が出てくるのは避けられない状況だ。では、実際に廃線を迎えた地域は、その後どうなっていくのか。「人々を駆り立てるロマンが廃線にはある」。そう締めくくられる事例研究のリポートをまとめた、日本政策金融公庫総合研究所の桑本香梨・主席研究員に聞いた。(聞き手:河合達郎、フリーライター)

※参考:『調査月報』(2023年4月号)研究リポート「廃線を町おこしのインフラに ―三つの地域の事例から学ぶ―」

【前編から読む】
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廃線で、あっという間に荒れていく

――旧高千穂鉄道(宮崎県)、旧小坂鉄道(秋田県)が観光客を取り込もうという活用をしているのに対し、名鉄三河線廃線敷(愛知県)は「担い手も使い手も現地住民が主体の取り組み」だとリポートで紹介しています。

桑本香梨・日本政策金融公庫総合研究所主席研究員(以下、桑本氏):三河線は2004年、中心市街地から離れた猿投(さなげ)―西中金(にしなかがね)間が廃線となりました。

 鉄道は使われなくなると、あっという間に荒れていきます。調査に訪れた地域のみなさんは、口をそろえて「大変なのは草むしり」とおっしゃっていました。

 雑草はすぐに伸び、景観が悪くなります。見通しが悪くなって獣や虫が出やすくなり、周辺の畑に被害が及ぶということもあります。

 こうした状況に立たされて動き出したのが、廃線区間にあった三河広瀬駅の近くに住む人たちでした。