住民の「なんとかしたい」が出発点

桑本氏:まず取り組んだのが、荒れつつあった周辺環境の整備です。地域の回覧板や掲示版で草刈りを呼び掛けると30人以上が集まったそうです。

「通学で慣れ親しんだ景色を取り戻したい」。集まった方々には、生まれ育った地域に対するそんな思いがありました。

 予算は自治体が創設した補助制度を活用しました。住民らで「広瀬愛護会」という自治組織をつくり、公的な補助に手を挙げたのです。

 合併により、自治体も地域に関することのすべてを公で賄うということが難しくなっています。そのため、住民の自治に任せながら、必要な経費について補助金を出すという姿勢でかかわるようになっています。

 こうして周辺の美化に動きつつ、地域住民らにはもう一つ、同時並行で検討を進めていたことがありました。駅舎の活用についてです。

 行政を通じて所有者の名鉄から許可を得ると、壁や屋根を補修し、かつての事務所には調理場を設けました。

 その結果、駅舎はいま、地域住民が気軽に集える喫茶スペースへと生まれ変わっています。一人暮らしの方が増えてきたことから、住民同士が交流できるような場所を設けたいという発想でした。

改札の名残を感じられる旧三河広瀬駅の喫茶室

 三河線の取り組みは、住民の「なんとかしたいね」がスタート地点になっています。補助金と会費を中心に充て、住民たちの憩いの場をつくりあげました。

 駅舎では産直野菜が販売され、前にはバスターミナルがあります。野菜を求めて主婦らが訪れ、朝は中高生らがバスを待っています。

 廃屋と化しつつあった駅舎では、地域住民が行き交う風景が見られるようになりました。