赤字ローカル線の存廃をめぐる動きが加速している。4月21日には、国会で改正地域公共交通活性化再生法が成立。今後進展する国・沿線自治体・鉄道事業者による再編協議の末に、廃線に至る路線が出てくるのは避けられない状況だ。では、実際に廃線を迎えた地域は、その後どうなっていくのか。「人々を駆り立てるロマンが廃線にはある」。そう締めくくられる事例研究のリポートをまとめた、日本政策金融公庫総合研究所の桑本香梨・主席研究員に聞いた。(聞き手:河合達郎、フリーライター)
※参考:『調査月報』(2023年4月号)研究リポート「廃線を町おこしのインフラに ―三つの地域の事例から学ぶ―」
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廃線は資源になりうる
――リポート締めくくりの一文が印象的でした。ネガティブな印象が強い廃線を「ロマン」と表現しています。
桑本香梨・日本政策金融公庫総合研究所主席研究員(以下、桑本氏):「廃線」というと、鉄道が走らなくなってもう終わり、地域からはいっそう人が減っていく、というのがもともとのイメージでした。
それが今回、よそ者として廃線活用の現場に調査に行き、すごくステキだなと。
「高千穂あまてらす鉄道」は、旧高千穂鉄道(宮崎県)を再生したテーマパークです。現役時代は日本一だった、高さ105mの鉄橋を走るカートが人気です。
取材に出向いたのは平日でしたが、結構若い人たちや小さな子ども連れの方がいらっしゃったんです。バイクでツーリングに来ている団体もいました。
旧小坂鉄道(秋田県)で走っていた「機関車四重連」は、現役時代からファンの間では特別なスポットだったそうです。20両近いタンク車を引いて急勾配を上るのに、特別仕様のディーゼル車を最大4両連結させて走らせたものです。
その車両が展示され、間近で見ることができ、中に入り、触ることができる。鉄道マニアにとっては、これが垂涎モノ。私は“鉄ちゃん”ではないですが、魅力を存分に感じました。
昔を懐かしむような形で活用ができるのであれば、廃線は外の人たちを呼び込む資源になり得ます。ローカル線の廃線が避けられない問題となるなか、処方箋を探りたい思いでリポートにまとめました。