2024年春、上下分離方式に移行する近江鉄道。2016年の「ギブアップ宣言」以降、県と沿線市町が存続か否かを協議してきた

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(土井勉:一般社団法人グローカル交流推進機構 理事長)

乗客急減→微増…実はわずかに増えていた乗客

1.近江鉄道線の輸送人員の変化と収益構造

 図-1は近江鉄道線の輸送人員の推移である。

図-1 近江鉄道線の輸送人員の推移(資料:近江鉄道1)、2002年度の輸送人員数は土井加筆)
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 最も輸送人員が多かった1967年度の1126万人から急激に右下がりの状況となっていることがわかる。最も少ない2002年度にはピーク時の1/3程度の輸送人員となった。

 しかし、ここから反転攻勢というほどの勢いはないにしても、増加に転じていることにも注意が必要だ。2019年度は2002年度に比べて100万人以上も輸送人員が増えている。

 近江鉄道線の沿線市町も近年は人口が伸び止まり、あるいは減少に転じている。さらにモータリゼーションの進行の影響も大きく受けている。だから、鉄道の輸送人員は減少していると思い込み、この増加について意外に気づかない人たちも少なくない。

 各地のローカル線や路線バスなどでも、コロナ禍の前の2019年度頃までの輸送人員を詳しく見ていくと、増加(もちろん微増のことが多い)している場合が少なくない。ローカル線は沿線の人口も減少しているし、モータリゼーションの影響が大きいので、輸送人員もひたすら減少している、と思いがちであるが、減少傾向が止まっている場合も少なくない。

 近江鉄道の増加の背景については、稿を改めて、次回以降の連載で述べたい。