機動性は他を圧倒している10式戦車(陸上自衛隊の富士総合火力演習より)

機動力

 トン当たり馬力は10式が他を圧倒している。

 しかしながら、戦場における機動は高速で走行することだけではなく、戦場における各種の地形克服能力が重要である。

 行動間、戦車は森林、草原、砂漠、都市(堅硬舗装道路)、田畑、湿地帯、時には水深2~3メートル以下の河川を行動しなければならない。

 そのため、堅固な足回りが重要である。

 接地するキャタビラの長さと幅(接地圧)・材質のみならず下部転輪への負荷の軽減が重要になってくる。

 10式は転輪数10脚で1脚当たりの圧は4.4t、M1A2は14脚で圧は4.8t、レオパルトは14脚で圧は4.2t、ルクレールは12脚で圧は4.6t、チャレンジャーは12脚で圧は6.1tである。

 エンジンはM1A2がガスタービンエンジン(ディーゼルに比べ燃費が悪い)のほかはディ-ゼルエンジンでその出力に大きな差異はない。

 超堤能力は各戦車とも1~1.2メートルで差異はない。超壕能力は概ね車体長の半数で、それぞれ4.7~5.3メートルでありこれも大きな差異はない。

 機敏な行動の目安となるのが最小回転半径である。

 M1A2、レオパルト、ルクレール、チャレンジャーの最小回転半径は概ね車体長と同じで10メートル前後である。

 10式は車体長の半分概ね5メートルである。なぜそのようなことが可能なのであろうか?

 秘密保全の観点から詳細を述べることはできないが、原理を説明しよう。

 一般的に戦車が方向転換をする時は、進みたい方向の履帯にブレーキをかけつつアクセルを踏むことで車体の方向を転換させるので、回転半径は概ね車体長となる。

 一方、10式は進みたい方向の履帯を自動的に逆回転させることが可能な歯車装置を持っていてブレーキをかける必要がないため、迅速な方向転換が可能になっている。

 結果として、列国の戦車の半分で方向転換が可能となっている。小回りが効くのである。

 行動距離は各戦車とも450~500キロであり、大きな差は見られない。

 渡渉能力については米国海兵隊向けM1A1と10式が渡渉機材を標準装備しており、潜水可能水深はM1A2で約2メートル、10式で約3メートルである。他の戦車は車体部の高さまでの水深は行動可能である。

 トータルバランスから機動性については①レオパルト②10式③ルクレール④M1A2⑤チャレンジャーの順とみるのが妥当ではないだろうか。