10式戦車のライバルたち(真ん中が米国のM1エイブラムス、両脇がドイツのレオパルト2、4月4日NATO=北大西洋条約機構の演習で、NATOのサイトより)

 前回は日本の最新式戦車である「10式(ひとまるしき)」戦車の開発全般について記述した。本稿では列国の主力戦車と比較しながら10式戦車の現状について述べてみたい。

 まず10式戦車と列国の主力戦車の性能諸元は次の通りである。M1A2は米国の「M1エイブラムス」、「レオパルト2」はドイツ、「ルクレール」はフランス、「チャレンジャー」は英国の各戦車である。

 下の表の中で、SBとは滑腔砲(Smooth-bore)、Gは施条砲(Gun)のこと。

戦車名 10式 M1A2 レオパルト2 ルクレール チャレンジャー
火砲 120SB 120SB 120SB 120SB 120G
口径 44 44 55 52 55
重量(t) 44 68 60 56 62
乗員(人) 3 4 4 3 4
最高速度(km/h) 73 66 72 72 56
エンジン(hp) 1200 1500 1500 1500 1200
出力(hp/t) 30 24 25 26 19
全長(m) 9.4 9.83 11.29 9.87 11.55
全高(m) 3.2 3.66 3.74 3.7 3.52
全幅(m) 2.3 2.88 2.63 2.53 2.49
特徴 自動装填 車長熱映像 熱映像 自動装填 層状装甲
  目標自動追尾 指揮統制 指揮統制 モジュール装甲 射撃統制
  射撃統制 車両間情報 射撃統制 電子装置 電子装置
  デジタル地図 射撃統制 複合装甲    
  着脱式複合装甲 ガスタービンエンジン 電気式砲制御安定装置    
  モジュール装甲 複合装甲      

 主要項目を比較してみたい。

火力(主砲)

 列国とも砲の直径に差はない。しかしながら、砲身の長さ(砲の直径×口径=口径長という)に差がある。

 口径長が長ければ長いほど高初速の徹甲弾を発射することができるので、レオパルド2、チャレンジャーの貫徹力は10式・M1A2・ルクレールを上回っていると基本的には考えられる。

 貫徹力は重要であるが、10式の開発間の実験と経験から徹甲弾は戦車に命中すれば、数十万Gの圧力が砲塔内に加わるため、たとえ貫通しなくても、砲塔内の乗員に致命的なダメージ与える。

 命中することが大事なのである。

 命中精度は各種射撃統制装置が大きく影響するが、各国ともその性能の細部について明らかにしていないので、判定は困難である。

 実戦を経験しているM1A2が装置の改善を着実に図っているとみられる。また、口径長が大きいと戦車の重量も増えるので、迅速な機動に影響が出てくるマイナス面も承知しておく必要がある。