失敗を教訓にスキームを構築

 地元のシンボルになっていた歴史ある空き家を改修し、町で保存する計画だった。

 所有者から無償で譲り受けるところまで話が進んでいたが、改修計画の取りまとめや所有権の移転費用の工面が難航し、譲渡が白紙になってしまったのである。

 このときの教訓を生かし、会では空き家を賃借することにした。譲渡に比べて費用の負担を抑え、所有者にとっても煩雑な登記などの手続きをしなくて済むからだ。

 賃貸契約を結ぶ際の契約書には、会が原状回復義務を負わないことを明記し、その代わり、改修の主体は住人ではなく会が主体となることも盛り込んだ。また、所有者と頻繁に連絡を取り、賃貸の条件や改修の方針にずれが生じないように心がけている。

 所有者と住人の間に、地域の実情に精通している会が入ることで、所有者は安心して任せられ、契約もスムーズに運ぶ。そもそも、地元から離れて暮らす所有者を、地元のネットワークをもたない移住者が探し出すのは簡単ではない。

 改修にかかる費用も抑える。
 
 2件目の再生プロジェクトでは、会メンバーのつてを頼り、大学で建築デザインを教える講師に協力を依頼、学生たちが中心となって、建物の測量や図面の作成、改修まで行った。学生にとっては実際に作業できる貴重な機会になる。

学生のアイデアを取り入れながら一緒に空き家を改修

 その後も、学生の協力を得るほか、会のメンバーも自ら技術を身につけていった。

空き家で地域に人を呼び込む

 この2件目の改修物件は、現在「だしとお茶の店 潮や、」というカフェになっている。地元の煎茶や薩南の鰹節を使っただし茶漬けなどを提供している。

 大きなカウンターを配置したおしゃれなカフェには、平日でも町外から訪れた若者が行列をつくる。

連日町外から客が訪れる「だしとお茶の店 潮や、」

 潮や、を運営するのは、会が49%出資するかたちで移住者が立ち上げた株式会社オコソコである。会と一緒に空き家の再生事業にも携わり、空き家を利用したシェアハウス・オフィスの運営や空き家に関するイベントの企画などを行う。

 空き家が地域を訪れるきっかけになり、地域とつながる人が増えている。