G7気候・エネルギー・環境相会合に合わせ、札幌市で「脱炭素」を訴えながら行進する人たち=2023年4月15日(写真:共同通信社)
  • 脱炭素に向けた中小企業の取り組みが進んでいない。2022年8月現在、脱炭素に取り組む中小企業は44.9%と半数に満たず、3年で3ポイント増にとどまった。
  • 取り組みによる採算への影響を気にする経営者が多く、実際に17.6%が「マイナスの影響があった」と答えた。
  • 補助金など資金面のサポートを求める声が多かったが、コストや手間を抑えながら脱炭素に取り組める安価で優れた商品・サービスが求められているだろう。

~ 中小企業の今とこれからを描く ~
 日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回のテーマは、中小企業と脱炭素です。

(原澤大地:日本政策金融公庫総合研究所 研究員)

温室効果ガス削減に取り組む中小企業は半数に満たない

 年々深刻化している気候変動問題を解決するべく、脱炭素の動きが世界的に進んでいる。

 日本でも、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減し、2050年には脱炭素社会を実現することが政府の目標として掲げられている。

 環境省が発行している『令和4年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』によると、2020年度の日本の温室効果ガス排出量のうち、79%が企業・公共部門関連によるものとされる。前述の排出削減目標を達成するためには、大企業はもちろん、中小企業においても温室効果ガス削減に向けて一層の努力が求められよう。

 しかし、当研究所が行ったアンケートでは、調査を行った2022年8月現在、温室効果ガス削減の取り組みを実施している中小企業は44.9%と半数に満たなかった(図1)。
 

図1:温室効果ガス削減の取り組み実施状況(資料:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の脱炭素への取り組みに関する調査」<2022年8月>(以下同じ))※注)割合は総務省・経済産業省「経済センサス―活動調査」(2016年)の業種別・従業者規模別の企業分布と同じになるようウエイトづけして算出した値。ただしnは実際の回答数(以下同じ)。
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【興味のある方はこちらもご覧ください】

脱炭素への道を拓く中小企業|同友館オンライン  脱炭素社会の実現に向け、中小企業には温室効果ガス削減に取り組むこと、その後押しをするビジネスの担い手となることが期待されている。アンケートとヒアリングに基づき、中小企業と脱炭素のかかわりについて論じた一冊(税込み2,640円)。
日本政策金融公庫総合研究所『調査月報』(2023年5月号) 中小企業に関する実態調査結果や工夫事例をタイムリーに紹介しています(月刊)。

 調査の3年前(2019年)の時点で温室効果ガス削減の取り組みを実施していた中小企業の割合は41.9%であり、2019年から2022年にかけては3.0ポイントの増加にとどまった。

 この間、2020年10月に菅義偉首相(当時)によって「2050年カーボンニュートラル宣言」がなされるなど、脱炭素への社会的な意識は高まったものの、中小企業における取り組みはあまり進まなかったようだ。