小規模な企業ほど取り組みに遅れ

 中小企業のなかでも、取り組みの進捗状況は一様でない。現在の実施企業割合を従業者規模別にみると、「50~299人」では66.0%、「20~49人」では48.3%、「10~19人」では45.9%、「5~9人」では39.8%と、小規模な企業ほど取り組みが遅れている傾向がみられた(図2)。

図2:取り組みの実施企業割合(現在、従業者規模別)※注)nの記載は省略。
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 小規模な企業では、1社当たりの温室効果ガス排出量こそ多くないかもしれない。しかし、日本には従業者数が20人未満の企業が300万社以上も存在しており、そうした企業が排出する温室効果ガスを足し合わせていけば膨大な量になる。

「脱炭素は大企業だけの問題」と考えるのではなく、小規模な企業であっても当事者として社会的な責任を果たしていく必要があるだろう。

脱炭素の実現に向けた国民運動「デコ活」。環境省が旗を振り、政財界に加え人気漫才師やタレントを起用してのPRが始まった=2023年7月13日(写真:共同通信社)

取り組むことで事業にマイナスの影響を及ぼす場合も

 中小企業の経営者に対し、温室効果ガス削減に向けた3年後までの自社の取り組み方針を尋ねたところ、「経営の負担になっても進めたい」は5.7%、「経営の負担にならない範囲で進めたい」は65.1%、「あまり積極的に進めるつもりはない」は29.2%であった(図3)。

 取り組みの必要性は感じつつも、取り組むことで経営に悪影響が出ては困る、というのが経営者のリアルな声である。

図3:3年後までの取り組み方針
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 温室効果ガス削減の取り組みを現在実施している企業に対して、取り組みによる事業全体への影響を尋ねたところ、「プラスの影響があった」が20.2%、「どちらともいえない」が69.0%、「マイナスの影響があった」が10.9%となった(図4)。企業によっては、マイナスの影響を感じているケースがあるようだ。

 特筆すべきは、取り組みによる採算状況への影響だ。「どちらともいえない」(65.6%)が半数以上を占める点は変わらないが、「マイナスの影響があった」(17.6%)が「プラスの影響があった」(16.8%)を上回っていた。

図4:取り組みによる影響
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 電気自動車や再生可能エネルギーといった温室効果ガス削減につながる商品・サービスは、そうでないものに比べて現時点では割高であることが少なくない。採算状況へのマイナスの影響を感じている企業が比較的多いのは、温室効果ガス削減の取り組みにコストがかかることの表れであろう。