「自由で開かれたインド太平洋戦略」に参加中の米海兵隊のヘリコプター(4月11日南シナ海海上で、米海兵隊のサイトより)

豪海軍ヘリを中国戦闘機が妨害

~北朝鮮の制裁破りを警戒中に~

 中国の戦闘機が5月6日、「黄海」の公海上で、国際社会が国連を通じて北朝鮮に科した制裁を履行するため哨戒中の豪海軍ヘリコプターの進路を妨害するように照明弾を投下する危険極まりない行動に出た。

 この背景として、2つの大きな理由が指摘される。

 その一つは、北朝鮮の核開発を阻止するために制裁を科した国連安保理決議を、同常任理事国の中国とロシアが破っている事実を隠蔽するためである。

 もう一つは、中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略の中で、特に領域拒否(AD)戦略によって黄海から東シナ海、南シナ海を「中国の海」、すなわち中国の内海化、軍事的聖域化する行動の一環と見られることである。

 米CNNが伝えた所によると、その事件の概要はこうだ。

 豪国防軍の「MH-60R」シーホークヘリが5月6日、国連による北朝鮮への制裁を履行するため哨戒中の黄海の公海上で、同ヘリコプターの進路に対し中国の戦闘機が照明弾を投下した。

 これを受け、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は7日、CNNの提携局「9ニュース」のインタビューに応じた。

 同首相は、この行動に対して、中国政府に「外交を通じて適切に抗議」しているとし、「我々は中国に対し、中国の行動は職業倫理に反するものであり、容認できないということを明確に伝えたところだ」と述べた。

 リチャード・マールズ国防相は、中国機は「シーホークヘリの前方約300メートル、上空約60メートルに照明弾を投下した」と危機感を募らせた。

 一方、中国外務省の林剣報道官は、「国連安保理決議の履行を装い、オーストラリアの軍艦や航空機が意図的に中国の領空に接近し、問題を引き起こして挑発し、中国の海上および航空の安全を危険にさらした」と述べた。

 そして、「中国軍は警告として現場で必要な措置を講じた。関連する行動は合法で法令を順守するものであり、職業的かつ安全なものだった」と反論した。

 問題は、中国の行動による被害や負傷者は報告されていないが、照明弾が当たることで回転翼が損傷したり、エンジンが巻き込んだりした場合、ヘリコプターの墜落といった事故につながる危険性があるからだ。

 それ以上に、この事件の重大さは、当初指摘した2つの背景的理由を見逃すことができないからである。