面積の9割を山林が占める北海道下川町。この山あいで次々と魅力的なビジネスが生まれるのはなぜか
  • 北海道下川町は面積の9割が山林で、人口は3千人弱。道北の小さな町だが、移住創業者をサポートする仕組みが充実している。
  • 移住創業者の養成塾「シモカワベアーズ」は、審査で選ばれた創業希望者を移住前から伴走支援するのが特徴。
  • 「兼業・複業」での創業を後押しする仕組みもあるほか、軌道に乗りやすい事業承継の成功事例も出てきている。

~ 中小企業の今とこれからを描く ~
 日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回は前回に引き続き、移住創業と地方の活性化をテーマに地域の取り組みを紹介します。

(桑本香梨:日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員)

「目新しければOK」ではない

 地域経済の潤滑油になることが期待される移住創業者。しかし、一念発起して始めた事業が地域の実情を無視したものであれば、商売を続けることは難しいだろう。

 顧客をつかめず事業から撤退することになれば、地域経済にとってもマイナスである。

 当研究所の調査では、地域住民の4割が移住創業者に対して「地域になかった事業の創出」を望んでいることが明らかになっている(図1)。

図1:地域住民は移住創業者に地域産業への貢献を期待(複数回答/資料:日本政策金融公庫総合研究所「移住創業に対する住民の意識調査」<2021年12月>)
拡大画像表示

※調査や事例の詳細はこちら
書籍:『移住創業と地域のこれから』|同友館オンライン
動画:日本公庫・研究ワークショップ2023年第2回「移住創業と地域振興」

 だが、目新しい事業であれば地域のニーズから外れていても問題ないというわけではない。

 地元企業との協業や地域の魅力発信、地域産品の活用などの回答が多いことからわかるように、地域産業への貢献に対する期待が根底にある。

 移住創業者の事業と地域の実情にずれが生じないよう、事業の企画段階からサポートしている地域がある。

 北海道下川町だ。

 下川町ホームページによれば、町の人口は2973人(2023年6月1日現在)、山林面積が89.4%を占める、道北に位置する山あいの町である。

道北の内陸部に位置する北海道下川町(下川町HP「下川町の概要 -町勢要覧資料編- (2022年版)」より)