薩摩半島の南端・頴娃町で、空き家を再生したゲストハウスを営む福澤知香さん
  • 鹿児島県南九州市頴娃町(えいちょう)では、地元NPOがハブとなった空き家再生スキームを試行錯誤の末に構築。
  • 「地元経済」「物件の所有者」「移住創業を志す入居者」の3者にとってメリットのある仕組みを確立した。
  • 空き家拝見ツアーや、お試し移住・仮店舗を開く場の提供、移住後のあいさつ回りへの付き添いといった費用面以外のサポートも重要。

~ 中小企業の今とこれからを描く ~
 日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回は、移住創業と地方の活性化をテーマに、空き家を活用した地域独自の取り組みを紹介します。

(桑本香梨:日本政策金融公庫総合研究所 主席研究員)

空き家は30年で倍増

 全国各地で空き家が増えている。

 総務省の調べでは、1988年から2018年の30年間に倍以上に膨らんだ(図1)。

図1:空き家は年々増加(総務省「住宅・土地統計調査」より作成)
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 国土交通省が2019年に行った調査(「令和元年空き家所有者実態調査」)では、人が住まなくなってから20年以上経っている空き家が、全体の2割以上を占める。所有者が遠方に住んでいてメンテナンスが難しかったり、更地にする費用を工面できなかったりして、放置されるケースも聞かれる。

 しかし、誰も住まない状態が長く続けば、景観が悪化し倒壊の危険が増すほか、防犯や衛生上の問題も懸念される。

 他方、移住や移住創業を考える人にとって、住む場所や事業を行う場所の確保は最重要課題の一つである。

 そこに空き家を充てれば、移住者は拠点を確保でき、所有者は家賃収入を得られ、地域は地元経済の活性化を期待できる。

 どうすれば、空き家をうまく活用できるのか。二つの地域の取り組みを紹介したい。

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日本公庫・研究ワークショップ2023年第2回「移住創業と地域振興」
移住創業による地域振興の可能性について、外部有識者を交えて行ったワークショップ

 

『移住創業と地域のこれから』|同友館オンライン
移住創業者・地域住民双方へのアンケートと地域の取り組み事例から移住創業の実態に迫り、コロナ禍を機に広がる地方への関心を移住創業へと高め、地域経済の活性化へつなげていくための方策を分析した一冊(税込み2,530円)