市と公社の基金を改修費の元手に

 岐阜県郡上市の八幡町も、空き家問題に悩んでいた。

 市による空き家所有者へのヒアリングでは、改修費用の負担や入居者とのトラブルへの懸念から、貸したくても貸せないという声が聞こえてきた。

 さらに、市自らが空き家を1軒借りて改修してみると、トイレが水洗式でなかったり、風呂場がなかったりして、今のライフスタイルに合わせるには相応の費用と時間がかかることがわかった。

 シロアリの発生など、改修して初めてみえる問題もある。離れた場所に住む所有者が現場に頻繁に立ち会い、工務店と打ち合わせをするのは難しい。地元の仲介役が必要だった。

 そこで市は、空き家の改修から入居希望者への貸し出しまでを一般社団法人郡上八幡産業振興公社に委託した。改修費用は市と公社が拠出する基金を元手にして、入居者から得る家賃の一部を基金に戻していくことにした。

改修は必要最低限に

 改修箇所が増えればその分家賃も高くなるため、必要最低限にとどめ、老朽化が激しい場合には再生を見送ることもある。公社による「チームまちや」が実働部隊となり、現場へ行って問題を一つずつ検討し、改修の可否や程度を見極めている。

チームまちやの武藤隆晴さんと枡田なつみさん

 改修した空き家はホームページで紹介するが、家が無人になっていることを不特定多数の人に知られるのを不安に感じる所有者もいるため、公開する物件は最小限にとどめる。また、周辺環境も踏まえて検討できるよう、空き家を10軒程度見学する「空き家拝見ツアー」を年3回開催する。