地元団体がハブになる
薩摩半島の南端にほど近い鹿児島県南九州市の頴娃町は、江戸時代は港町として豪商の家や商店が多く集まっていた。漆喰塗りの壁や低い石垣が連なる風情に、にぎわっていた当時がしのばれる。
この趣ある地区にある「福のや、」は、空き家を改修したゲストハウスである。
子ども連れや若い人が気軽に滞在できる場所をつくりたいと、町に移住した福澤知香さんが創業した。SNS上でも評判で、県外からもリピーターが訪れる。オプションで用意する町内を巡るツアーも人気だ。
町で空き家の再生を主導するのは、地元のNPO法人頴娃おこそ会である。
まず、空き家を所有者から会が直接借り受けて、家賃を支払う。少額だが、所有者にとっては固定資産税を賄う程度にはなる。
次に、会が大家となって入居者から家賃を受け取る。この支払い家賃と受け取り家賃の差額を、空き家の改修費用に充てるという仕組みである。
「不動産がもはや業として成り立たなくなった過疎のまちで、移住者を迎える上でやむを得ずNPOが家主と入居者の繋ぎ役を果たし、一軒一軒再生を手掛けてきた」
「まっとうな経済原理では立ちいかない過疎地の空き家の再生には、地域と連携した活動が不可欠だ」
頴娃おこそ会のホームページには、そんなメッセージが掲げられている。
◎「NPO法人頴娃おこそ会 空き家再生プロジェクトチーム」HP
空き家再生の中でも、難易度の高い過疎地での取り組みだ。この仕組みは、失敗やその後の試行錯誤の末に構築されたものである。
失敗は、最初の空き家再生プロジェクトで起きた。