『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第18回「岐路」では、藤原道隆のあとを継いで関白となった藤原道兼も病死。次の関白は藤原伊周か、あるいは藤原道長か、と注目されたが、道長にその気はなく……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
意外なほどに悲しかった「道兼の最期」
物語を通じて、登場人物たちの成長をいかに描くかが、ドラマのシナリオにおいては非常に重要となる。その点、『光る君へ』は、登場人物の心境の変化が丁寧に描かれているように思う。
今回の放送では、藤原道兼が兄の道隆から関白の座を引き継いだ途端に病死してしまう。道兼が早々に亡くなり、「七日関白」に終わることは史実として分かってはいたが、まさか道兼の死にこれほど心を揺さぶられるとは想像もしなかった。
第1話のラストで「まひろの母を殺す」という衝撃的な展開で視聴者を惹きつけて以来、その犯人である道兼への許しがたい怒りの感情は、いつしか「父の兼家に気に入られようと必死なんだ」という哀れみの気持ちに変わり、さらに疫病の悲惨さを自ら見に行く姿には「道兼の治世を見てみたい」とまで思うようになっていた。