『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第17回「うつろい」では、藤原道隆が病に伏せる。症状が悪化するにつれ、息子の伊周を後継者にしたいがばかりに暴走するようになり……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

藤原道隆が苦しんだ「飲水病」とは?

 驕れる者は久しからず――。

 鎌倉時代に成立した『平家物語』の冒頭で「地位や財力を鼻にかけ、おごり高ぶる者は、その身を長く保つことができない」という意味だが、すでに平安時代から当てはまることだったようだ。

 父の藤原兼家のあとをついだ長男の道隆は、自分の一族を強引に出世させながら栄華を誇るも、その政権はわずか5年でピリオドが打たれる。道隆が病に倒れて、43歳の若さで死去してしまったからだ。

 今回の放送では、井浦新演じる藤原道隆が、冒頭から体調が著しく悪い様子を見せている。帝の前で笛を吹いている最中に、咳き込んで演奏を中断。ふらつきながら立ち上がったが、その場で倒れてしまった。

 一体どうしたというのか。ユースケ・サンタマリア演じる安倍晴明を呼びつけると、道隆はこう訴えた。

「目がかすむ……手がしびれる……のどが渇く」

 症状からピンときた人もいるかもしれない。『栄花物語』では、「水を飲みきこしめし、いみじう細らせ給い」と書かれているように、実際の道隆も水をやたらに飲んでいたようだ。当時は「飲水病」と呼ばれていた糖尿病を患っていたらしい。

 今回の放送でも道隆は酒をあおっていたが、『大鏡』では道隆が大量に飲酒して、たびたび酔い潰れたという逸話が紹介されている。アルコールの大量摂取が、糖尿病の要因となった可能性は高そうだ。