不登校は夏休み明けの2学期に急増する(写真はイメージ:アフロ)

 子どもたちの夏休みが早くも中盤に差し掛かっている。「学校が始まるの嫌だな…」と不安そうな顔つきで子どもが口にしたら要注意だ。2学期が始まるのを恐れている不登校予備軍かもしれない。

 自身の経験から不登校に関するアドバイスや情報発信を続ける不登校新聞編集長の石井志昂氏によると、小・中学生の不登校が一番増えるのは2学期が始まるタイミングだという。「子どものストレスが爆発しやすい時期」(石井氏)で、不登校を回避するには夏休み中の過ごし方が大切だ。

 2021年度の不登校児童生徒(小中学生)数は、過去最多の24万4940人を記録し、9年連続で増加した。前年度から約5万人増え、20万人を超えたのは文科省が統計を取り始めてから初めてだ。不登校にならないための子どもの夏休み中の過ごし方について石井氏に聞いた。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

【関連記事】
「不登校の原因はいじめ=0.2%」という文科省と学校を信用できないワケ

親や先生から見えない陰湿な「いじめ」

──不登校の子どもが急速に増えています。背景には何があるのでしょうか。

石井志氏(以下、敬称略):2021年度の急増は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が主な原因とみられます。学校生活で子どもの活動が制限され、先行きも見通せず子どもの不安が強まっていました。様々な行事が中止になり、給食も黙って食べなければいけない。いつになったら元の生活に戻れるのだろう、いや、もう元には戻れないのかもしれない、という絶望が子どもの心を襲ったのは想像に難くありません。コロナ禍で蓄積していたストレスが21年になって爆発したのだと思います。

不登校はコロナ禍を経て急増した(出所:文部科学省のホームページ)

 ただ、コロナ禍を別にしても、この10年は「生きづらさの低年齢化」という現象がずっと叫ばれてきました。プログラミングや英語などの早期教育が加熱し、夜遅くまで塾に通ったり、習い事を何個も掛け持ちしたり、自由に遊ぶ時間がない小学生は今や珍しくありません。そうした中で子どものストレスも非常に高まってきました。そのはけ口として、先生や親にも見えない、不登校の一因となるいじめが増えています。

石井 志昂(いしい しこう) 1982年、東京都生まれ。中学2年生から不登校となりフリースクールに通う。19歳から日本で唯一の不登校の専門紙である「不登校新聞」のスタッフとなり、2006年から編集長。2020年からは、代表理事も務める。これまで、不登校の子どもや若者、識者ら400人以上に取材をしている。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)「フリースクールを考えたら最初に読む本」(主婦の友社)。メディア出演も多数。

 例えば、おとなしくて目立たない子に学級委員長を押し付けたり、足が遅い子に徒競走のアンカーを押し付けたり。あるいは、「〇〇菌」というあだ名。昔からあるようなあだ名ですか、最近は「ヒカキン」という人気YouTuberがいることから、「○○キン」と子どもたちが呼んでいても、大人はいじめと気がつかないといった事例もあります。

 昨今は小学生でもスマートフォンを持っているので、LINEなどのSNSを使ったいじめも低年齢化しています。LINEのグループにいじめられている子どもを招待して、みんなで「既読スルー」する、といったいじめです。こうした非常に高度な集団心理に基づいたいじめは日本特有で、「コミュニケーション操作系いじめ」と呼ばれていますが、こうしたいじめがどんどん低年齢化しているのです。

 ただ、不登校の原因はいじめだけではありません。担任の先生との関係や家庭環境、本人の特性など様々です。複数の原因が混ざり合っていることがほとんどです。大切なのは、不登校の理由が親や先生から見ても気づかないほど複雑で高度なものになっていることを認識することだと思います。