不登校児童(小中学生)が急増している。文部科学省の統計によると、2021年度は過去最多の24万4940人となり、9年連続で増加した。前年度から約5万人も増えている。
前回の記事では、不登校が急増するとされる2学期の生活に影響を及ぼす「夏休みの子どもとの接し方」について、不登校新聞編集長の石井志昂氏に解説してもらった。今回は、そもそも不登校の実態はどのような状況にあるのか石井氏に聞く。
石井氏は不登校の主な原因として「いじめ」と「教師との関係」を挙げる。だが、文科省の調査では、不登校の主な原因として「いじめ」の割合は0.2%で、教師との関係は1.2%と極めて低い数字となっている。また、早退したり保健室登校したりする子どもは文科省の調査では「不登校」として扱われておらず、広い意味で「学校(クラス)に行けない/行きたくない」という状態にある児童生徒数はその3倍以上いるのではないか、という説もある。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
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「公式データ」は実態を反映しているのか?
──前回は、子どもを不登校にさせないための夏休みの過ごし方について聞きました。読者からは「学校は不登校の子どものことをしっかり見てくれていない」という意見が目立ちました。
石井志昂氏(以下、敬称略):私もかつて不登校でしたが、約30年前の当時から学校は不登校の子どもに対してあまり理解がありませんでした。その状況は今も解消されていません。
前回の記事で、小中学生の不登校の理由は複合的だ、とお話ししました。それでも、私がこの業界をずっと取材してきた限り、圧倒的に多い理由は「いじめ」です。最近は「教師との関係」もすごく多い。
しかし、2021年度の文科省の調査※によると、不登校の主たる原因として「いじめ」はわずか0.2%となっています。「教職員との関係をめぐる問題」は1.2%。いずれも私の感覚と比べて非常に低い。実態とのギャップがあまりにも大きすぎます。
※文科省『令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果』
──なぜ、そこまで現実と乖離した数字が出てしまうのでしょう。
石井:まず、この調査は学校が文科省に報告していることに留意する必要があります。不登校の子どもが直接アンケートに記入しているわけではありません。
学校が監督官庁である文科省に報告する際、「私たちの学校の生徒が不登校になったのは、いじめが原因です」とは正直に報告しにくいでしょう。「教師が原因で生徒が不登校になりました」と記載する動機も働きません。さらに、子ども自身、親や先生に「いじめや担任の先生との人間関係が原因」とは言いにくいという事情もあります。
とにかく体が動かなくなり、原因を説明するエネルギーもない、という子どもがほとんどです。このような事情から、不登校の原因と実態はものすごく見えにくい構造になっているのです。