実は重要な「教育機会確保法」

──まるで「不登校は自己責任」といって突き放してしまうような状況ですね。

石井:もともと、不登校の子どもの支援は地域のNPO(非営利組織)やフリースクールが主に担ってきたという歴史があり、学校は積極的に関与してきませんでした。ただ、学校だけを責めるのも酷だと思います。小中学校の教員は生徒の学力向上や生活リズム維持に向けた指導が主な仕事です。「子どもの心のケア」という分野に関しては、プロではない人がほとんどです。

──昨今は「多様な学びのあり方」が奨励され、学校に通うだけが全てではない時代になってきました。

石井:これはあまり注目されていませんが、日本の法律自身が「学校以外の学びの場」は重要だと認めています。

 2017年2月、通称「教育機会確保法」が施行されました。これは「一条校」(学校教育法第1条で定められた学校の種類、公立小中学校など10校)以外に該当するフリースクールやオルタナティブスクール、通信学習などで学ぶ子どもの権利を「認める」という法律です。

 この法律が与えたインパクトは実は大きい。なぜなら、「親と保護者に対して子どもに普通教育を受けさせる義務」を定めた日本国憲法第26条は、普通教育の場として「一条校」を前提としています。そのため、それ以外の学びの場は「普通教育を受けさせる場ではない」という認識が当たり前となってきました。

 学校に行けなくても、子どもたちは元気になったら普通に勉強したい、スポーツをしたい、音楽をしたい、と考えていることが多い。ただ、これまで「学校」という場が前提となってしまっていたので、その思いの実現を阻んでしまっているケースが多かったのです。教育機会確保法は、従来の学校以外でも子どもが学ぶ権利を保証するという意味で、非常に重要な法律です。