広尾学園中学校・高等学校

 中学受験において“国際派私学”というカテゴリーに分類される学校が年々増え、難関校となっている。なぜいまこうした学校が人気なのか。安田教育研究所の安田理氏が、国際派私学の代表的存在である渋谷教育学園渋谷、広尾学園を中心にその理由を探る。(JBpress編集部)

グローバル教育に注力して人気を集める学校群

 中学受験に縁のなかった人は、渋谷教育学園渋谷、広尾学園、三田国際学園、開智日本橋学園、かえつ有明、文化学園大学杉並、八雲学園……などの校名はなじみが薄いかもしれない。

 これらの学校の共通項は、女子校が共学化(多くは校名も変更)し、それを機にグローバル教育に大きく舵を切った点にある。いずれも英語教育を“使える英語”にシフトし、海外研修、ホームステイ、留学の機会も豊富に用意している。また、多くが帰国生入試に力を入れ、在籍者に占める帰国生の比率が高い点でも共通している。

 注目は、ここ数年でこうしたタイプの学校が一段と増えていることだ。2021年に広尾学園小石川、2022年にサレジアン国際学園、2023年にサレジアン国際学園世田谷、芝国際などが誕生している(2025年には羽田国際も開校予定/高校は2024年に蒲田女子が共学化)。

 2023年度入試で前年より受験者が増えた学校ベスト10を出してみると、芝国際、サレジアン国際学園世田谷が1位、2位で、広尾学園が4位と上位を占めた。サレジアン国際学園も10位である。たちまち人気校になる。

 校名を挙げた学校の中で共学化が最も古かったのは渋谷教育学園渋谷で、1996年。ついでかえつ有明が2006年、広尾学園が2007年。ほかはいずれも2015年以降とごく最近で、国際派私学の中ではこの3校が“老舗”といえる。

 このうち渋谷教育学園渋谷と広尾学園は今や最難関校のポジションに位置している。2023年度入試における四谷大塚の結果偏差値(2月1日午前入試)は【表1】のようになっている。


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 このほかグローバル教育に力を入れている学校では、広尾学園小石川が男子56・女子58、三田国際学園が男子55・女子57、開智日本橋学園が男子54・女子56、芝国際が男子52・女子54などが高く位置づけられている。いずれも女子のほうが2ポイント高くなっているのが特徴的で、国際派私学は女子に人気で受験者も多いため、男子より偏差値が高くなる傾向がある。

【表1】に登場している学校の中で、共学校は渋谷教育学園渋谷と広尾学園以外は早稲田実業だけである。別の入試日程でも都内では都立小石川中等教育学校、筑波大学附属、慶應中等部、青山学院くらいである。

 上記のうち古くからあるのは筑波大学附属、慶應中等部、青山学院。つまり、都内にはレベルの高い共学の進学校がなかったのである。渋谷教育学園渋谷、広尾学園が短期間で躍進できた要因の1つはこの外部環境にあったと言える。進学校で共学校というニーズにはまったことが大きい。

 もう1つは、この間に社会のさまざまな面でグローバル化が進み、教育においても英語力、海外経験、多様性、主体性などが重視されるようになったことが、これらの学校の“追い風”になったと言える。

 特に渋谷教育学園渋谷、広尾学園が中学受験家庭からの支持を受け、どちらかというとアーリーアダプター層の人気が高いことがわかり、この路線を踏襲する私学が増えたというのが近年の中学受験の図式と言える。

 では、受験生や保護者は渋谷教育学園渋谷、広尾学園のどこに魅力を感じているのか、より具体的に見ていこう。