中学受験では早い段階から、付属校にするか進学校にするかで迷う家庭が多い。付属校は当然ながら併設大学への進学まで見据えて受験するケースが多いが、近年の付属校受験にはどんな特徴があるのか。安田教育研究所代表の安田理氏が、付属校志望を大きく左右する大学受験事情を織り込みながら、どこよりも早く2025年度入試を展望する。(JBpress編集部)
付属校志向に拍車がかかった背景とは?
まず近年の付属校志向の背景を振り返ってみたい。
2016年、政府の「地方創生政策」の一環で、東京23区内の大学入学定員の厳格化が始まった。定員を守るには合格者の発表数を減らすしかなく、私大のレベルが軒並み難化した。
2020年に『大東亜帝国(大東文化、東海、亜細亜、帝京、国士舘)』にくくられる、ある大学の教授と話をしていた時に、「これまでいなかった優秀な学生が入学してくれるようになった」「偏差値でいうと5くらいは上昇した感じがする」といった話を聞いた。
受かると思っていた私大に不合格となった身近な受験生たちの話があふれ、それを耳にした保護者が私大の難化に危機感を持ち、中高から付属校に入れることを目指した──。これが近年の付属校志向のいちばん大きな要因だろう。
加えて、大学側が総合型選抜(提出書類や面接、小論文などさまざまな試験を組み合わせ、一人一人を丁寧に評価する入試方式)、学校推薦型選抜の募集枠を広げる方向にあるため、一般選抜の募集枠が年々減少していることが挙げられる。あまり知られていないが、【表1】のように20年前と比べると、主要大学のほとんどで一般選抜枠が縮小している。
表に挙げた11大学の中で一般選抜枠が拡大しているのは、中央大、法政大、専修大の3大学しかない。20年前には60%台だった早稲田大、慶應義塾大は50%台しかなく、70%台だった明治大、青山学院大、立教大は60%台に縮小している。
さらに、大学が付属校や系列校を増やしていることも影響している。中央大学附属横浜(前横浜山手女子)、青山学院横浜英和(前横浜英和女学院)、目黒日本大学(前日出学園)、青山学院大学系属浦和ルーテル学院(前浦和ルーテル学院)といった学校が近年、大学の付属、系属、準付属となっている。2026年には日本学園が明治大学の系列校になり、校名も明治大学付属世田谷に変更されることが決まっている。
これらのことから、わが子の大学受験時には一般選抜枠が格段に狭き門になるのではと保護者が警戒し、中学の段階で付属校に入れようとしたことが付属校志向に拍車をかけたのである。