2023年9月、高校と大学との関係でエポックメイキングなできごとが2つあった。1つは上智大学が全国40校あまりの高校と一気に連携協定を結んだこと。もう1つは立教大学が系属校である香蘭女学校からの進学推薦枠を97人から一挙に160人に拡大したことだ。なぜ今こうした変化が起きているのだろうか──。安田教育研究所代表の安田理氏がレポートする。
学力が保証された学生をいち早く確保したい狙い
上智大学では長年、カトリック高等学校対象特別入学試験(通称「カト推」)という形の入試を実施している。日本カトリック学校連合会に加盟する高校に在籍する現役生のみが出願できるものだ。
2020年度までは学校の推薦が必要な指定校推薦に近い形で行われていたが、2021年度からは自由応募となり、「総合型選抜」として実施されている。
これは現在も続いているが、今年の4月以降これに加えて、横浜雙葉、湘南白百合学園、清泉女学院、不二聖心女子学院など、個々のカトリック学校と連携協定を締結するようになった。さらに9月以降、首都圏だけでもカリタス女子、光塩女子学院、晃華学園、聖心女子学院、聖園女学院、サレジアン国際学園、聖ヨゼフ学園、聖パウロ学園、東星学園……と一気に拡大した。その数は全国で40校に及ぶ。
これまで通り「カト推」でいいのではないかと思うが、9月以降に協定を結んだ中高一貫校の校長から、「本校が上智大学と連携したことを知った中3生徒数名が高校では他校進学を考えていたのに、そのまま進学することに決めました。思った以上に内部でも反響が大きいのだと実感しているところです」というメールをもらった。
具体的に個々の学校と協定を結ぶことで、より志望者増につながるのである。
また、立教大学も高校とのパイプを拡充している。なかでも香蘭女学校は、プロテスタント系キリスト教の中でも「聖公会」という英国教会に連なる宗派の学校で、立教大学も同じ聖公会ということで古くから関係が深かった(香蘭はイギリスの聖公会が母体で、立教はアメリカの聖公会が母体)。
当初は香蘭女学校から立教大学への進学推薦枠はさほど多くはなかったが、長い歴史の中で徐々に拡大し、近年は100人弱になり、今後一気に160人に増員すると発表した。
その背景には、香蘭の生徒の学力上昇がある。香蘭は2019年度入試から2月2日の午後入試を始めたことで、それまで香蘭を視野に入れていなかった2月1日の上位校を受験する受験生が多く併願するようになった。キャンパスを訪れると「たたずまいが素敵」という評判も広がり、入学者のレベルは上がっていった。
今回、立教大学サイドが進学枠を学則定員数のほぼ全員に相当する160人に広げたのも、学力が保証された学生を少しでも多く早めに確保しておきたいという狙いがあるとみられる。