歴史ある女子校の人気が復活している(写真はイメージ)

(安田 理:安田教育研究所代表)

共学よりも男子校・女子校の出願率が高いワケ

 首都圏中学入試のピークである2月1日が目前に迫っている。近年、中学入試は共学校の人気が続いていたが、今年は意外にもそうではない。1月23日時点ではむしろ男子校や女子校の出願が目立っていた。年々共学化が進む中、特に女子校人気が復活しているのはなぜか。今回はここに注目してみたい。

 筆者は仕事柄、東京の私立中学の出願が始まる1月10日以降、毎日のように出願状況をチェックしているが、1週間が経過して気づいたことがある。昨年の最終出願者数と比較した出願率(1月17日時点でどのくらいの出願があったか)を算出したところ、共学校よりも男子校や女子校の出願率が高かったのだ。東京と同じく2月1日に入試がスタートする神奈川も同様の傾向が見られた(【表1】参照)。

 これほど違いが出るとは正直想像していなかったが、なぜ共学校よりも男子校や女子校の出願率が高いのか、その要因をいくつか挙げてみよう。

・そもそも共学校は学校数が多く、受験生が志望校選びに迷っている。
・共学の人気校は次の時代に向けた教育内容を標榜している学校が多いが、どこも似ているために入試の難易度や倍率で選ぼうとする傾向がある。そのためぎりぎりまで出願を控えている。
・男子校・女子校には伝統、校風、行事、宗教など独自色の強い学校が多く、それらにこだわりがある家庭は早々に出願する。
・神奈川の女子校の出願率の高さが目立つのは、歴史の古いキリスト教系のプロテスタント校、カトリック校が多く、受験スタート時から志望校に決めているケースが多い。また、一部の学校を除き他県からの出願が少ないことも要因。

昨年の最終出願者数を上回っている学校一覧

 次に、1月23日時点で、「第1回入試」の出願者数が前年の最終出願者数を上回っている学校名を調べてみた(【表2】参照)。

 中学入試は試験日が1日だけの学校は最難関校くらいで、ほとんどの学校が複数回、多いところは午後入試を含め10回以上行っているため、最後の試験日は2月10日前後まで先になる。当然出願時期も遅いので、事前に個々の学校の出願状況をチェックするときにはその学校の第1回入試に着眼することになる。

 ちなみに、2023年度入試の目玉ともいえる日本学園は、2026年4月から明治大学附属世田谷になるが、1月23日時点の出願者数は359名で前年最終よりすでに5倍以上となっていた。東京女子学園が共学化する芝国際も381名(男子183名、女子198名)と大人気だ。

 個々の学校に着目しても、学校数の多い共学校より男子校、女子校で前年の最終出願者数を上回っている比率が高いことがうかがえる。しかも、男子校は東京も神奈川も難関校が並んでいてわかりやすい構図だ。

 一方、女子校は13校のうち半数以上の7校がキリスト教系であることが際立った特徴といえる。カトリック校が雙葉、カリタス女子、湘南白百合学園、横浜雙葉の4校、プロテスタント校が玉川聖学院、東洋英和女学院、立教女学院の3校。しかも玉川聖学院以外はみな併設の小学校がある。

「女子校」、「宗教系」、「併設の小学校あり」は中学受験の世界で受験生が集まらない“三重苦”と言われてきたのが嘘のようである。出願者数が100名に届いていないので表には掲載していないが、1月23日時点ですでに前年を上回っていた光塩女子学院、聖園女学院もカトリック校である。

 共学校は東京都市大学等々力、広尾学園のように学力レベルが高い学校もあれば、そのほかいろいろなタイプの学校があり、特に共通した傾向は見いだせない。女子が増えている学校に目黒日本大学、青山学院横浜英和、日本大学藤沢などが並んでいることで、女子にエスカレーター志向が見えることくらいか。