不自然な受け答え
Kさんの話の途中に早貴被告がリビングに現れて会話に加わったという。ここで主に吉田氏が早貴被告から事情を聴いた。
――ボクが昨日の午後4時ごろにドン・ファンと電話で話していたときに、キミはどこにいた?
「2階の寝室で社長の横でゲームをしていました」
――ボクが今日、田辺に来ることをキミは知っていた?
「ええ、社長が『吉田さんが明日来てくれる』とアプリコに連絡していましたから」
――その時、彼は何をしていたの?
「アレ、なんだっけな? テレビを見ていたと思います」
ただこのとき、早貴被告はわずか一日も経っていないのに、なんの番組を見ていただのかも答えられなかったという。
――相撲ではなかった?
吉田氏の助け舟に「そうそう」と早貴被告は頷き、5時過ぎに1階のリビングへ降りていき、それから冷蔵庫にあった瓶ビールを飲んだと証言した。相撲の取り組みが終わっていない途中にリビングに降りていくというのも不自然だが、下でもテレビで相撲を見ながらビールを飲んでいたという。
こうした会話の最中、早貴被告が席を少し外した。そのときにKさんが、マコやんと吉田氏にこう囁いたという。
「私が戻って来た時にはリビングのテーブルの上には空のビール瓶はなかったわよ。おかしくない? 彼女は掃除をすることもないし、片付けをしたこともないのよ」
マコやんも吉田氏も、Kさんの“証言”は大きな意味を持つものと受け止めたという。
莫大な資産を持つ野崎氏だったが、実は「遺言状」を残していた。自分が亡くなったら全財産をおよそ13億円もの資産を田辺市に寄付するという内容だ。田辺市によれば、野崎氏の全財産は13億円とのことだが、遺族によれば30億円はくだらないという。もっとも、この「遺言状」には不審な点があるとして、遺族によりその真贋が裁判で争われている。
そして、仮にこの遺言状の正当なものだと認められたとしても、早貴被告や遺族は、遺留分請求をすれば、法定相続分の半分を受け取ることが可能だ。野崎氏が亡くなった今、その死に事件性がなければ、早貴被告は億単位の遺産を受け取ることになる。