この年の10月、Kさんと早貴被告、そして吉田氏が都内の焼き肉店で会う機会があった。その時に吉田氏は白い紙とペンを早貴被告の前に置き、こう切り出したという。
――「Kさんに3000万円を差し上げます」と一筆書いてくれないか。言った言わない問題が起きないように。
しかし早貴被告はしばらく下を向いていてから、こう言った。
「書けません」
この時点で早貴被告の態度は一変していた。マコやんたちの推測が正しいとすれば、彼女は「Kさんに大事なことは見られていなかった」と判断したのかもしれない。
ようやくの逮捕
早貴被告が和歌山県警に逮捕されたのは、事件からおよそ3年が経った2021年4月28日のことだった。都内品川区内のマンションにいたところを殺人と覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕され、飛行機で南紀白浜空港に搬送され、田辺署に身柄を移された。
野崎氏の死亡直後から、メディアも早貴被告の関与があったと睨んでさまざまな報道をしてきたが、警察が彼女を逮捕するのには、驚くほどの時間がかかった。
「何度か逮捕の“Xデー情報”が流されていたのですが、その度に大阪の検察の反対によって流されたようです。その検察官が異動になったことで重しがなくなり、ついに逮捕ということになった。起訴されたのは逮捕翌月の5月です。同時に札幌の高齢者を騙して6000万円を詐欺した容疑でも再逮捕されています。それから間もなく2年が経とうとしていますが、不思議なことに、まだ裁判日程すら決まっていません」(全国紙社会部デスク)
容疑を否定していることで彼女は保釈もされることもなく、接見も禁止処分で和歌山市内の丸の内拘置所に身柄はある。
「和歌山といえばカレー事件が有名なので、ドン・ファン殺人事件をカレー事件と比べる者もいます。カレー事件は証拠が希薄ですが、ドン・ファン事件はそれとは異なっていて、検察側は自信があるようです。早貴被告の殺人を裏付ける証拠が何なのか、記者たちは想像している状況です」(前出・デスク)