新体制、初会合まで3週間
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
金融市場では、依然として欧米を震源地とする金融不安の影響が燻っているが、利上げ停止、ひいては利下げ転換を過剰に期待するようなムードもだいぶ失せている。同時に、黒田日銀総裁が4月8日に退任し、9日には植田新総裁が就任することに合わせて、3週間後(4月27~28日)に迫った植田新体制の初会合に対する質問も増えつつある。
基本的に、新体制の総裁に誰が選ばれようと、次期体制を巡る注目点は、①イールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化(撤廃含む)と、②マイナス金利の解除と考えられてきた。この点は金融市場でもほとんど意見が割れていないだろう。
※イールドカーブ・コントロール(YCC):長短金利操作。長期金利と短期金利の誘導目標を操作し、イールドカーブ(利回り曲線)を適切な水準に維持すること
問題はそのタイミングをいつと考えるかだ。
まずは難易度が低い①の実施時期に注目が集まることも衆目の一致するところである。後述するように、実施タイミング次第で①イールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化は「あくまで枠組みの修正であって緩和路線自体は不変」と言い張ることができるが、②マイナス金利の解除は正真正銘の利上げである。
もちろん、「マイナス金利はリバーサルレートゆえ引き上げはむしろ緩和」という方便もあり得るが、基本的には賃金・物価の騰勢と景気の好調がある程度認められない限り、難しいオプションである。低迷が既定路線とされる今年の世界経済の見通しを踏まえれば、2023年の着手は困難ではないか。
これに対し、①イールドカーブ・コントロール(YCC)の柔軟化はタイミング次第では現実的なオプションになる。
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