初回会合で踏み込んだ決断の可能性
なお、現状では、長期金利の許容変動幅の拡大ないし撤廃は金利上昇方向の展開ばかりが注目されやすいが、リスクオフ局面における長期金利低下余地の拡大という側面もある。今後、新たな材料が出て国際金融不安がさらに深まった場合、欧米中銀が明確なハト派に転じる時間帯が到来する可能性はある(周知の通り、市場は米国のフェデラルファンド<FF>金利の年内引き下げを織り込み始めている)。
その際、「日銀は何ができるのか」ということは当然争点になるだろうが、変動幅拡大(もしくはYCC自体の撤廃)によって長期金利が顕著に低下し、ゼロ近傍に張り付く(ないし断続的にマイナスになる)ことがあれば、これを緩和効果として強弁することも可能になるはずである。
現状、初会合は様子見が濃厚と予想しておきたい。繰り返しになるが、3週間後の市況が定まらない以上、予想を固めるのは現実的ではない。しかし、客観的に見れば初回会合で踏み込んだ決断をすることのメリットは大きくないように思える。
周知の通り、日本社会では経済・金融情勢の好不調を中央銀行の政策運営に集約しようとする論調が支持を得やすい。これが向かい風となったのが白川体制、追い風となったのが黒田体制であった(もっとも黒田体制も最終的には多くの批判を内包することになり、世論で金融政策の方向を決めることの危うさを示したように思うが)。
こうした社会的背景を思えば、初回(4月)会合での決定が、今後5年間のイメージを規定してしまう可能性がある。