安倍元首相が辛辣に評価した小池都知事の本質
橋本:安倍さんは第一次政権が失敗したからこそ、第二次政権を長く続けることができたのだと考えていました。イデオロギー色の強かった第一次政権から、生活や経済に目を向ける考え方にチェンジした。そこから、アベノミクスが出てきたのです。
そして、菅義偉さんにしても、内閣総理大臣補佐官兼総理大臣秘書官を務めた今井尚哉さんにしてもそうですが、一緒に第一次政権の失敗を共有した仲間たちが第二次政権に馳せ参ずる。
第二次内閣が1年経ったあたりで靖国参拝をどうするかという時に、今井さんは「参拝するならば秘書官を辞める」と安倍さんに伝えて止めようとした。そのように、命をかけて諫言できる忠誠心の厚い人たちが周りにいました。
彼らは第一次内閣で失敗を共有した人たちです。こういった人たちの存在が長期政権へつながった一番大きな要因だと安倍さんは言っていました。
──本書の中で安倍さんは、小池百合子さんについて「相手に勢いがある時には、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです」「しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです。『あれ、わき腹が痛いな』とこっちが思った時には、もう遅い」と語っています。なぜ安倍さんは小池さんをあそこまで辛辣に評価したのでしょうか。
橋本:小池さんを評価していたということだと思います。侮れない相手だと感じていた。安倍さんは2017年9月25日に衆院の解散を表明しましたが、小池さんが同じ日に希望の党の結党を発表した。
あの時、小池さんが排除論理(公認申請する民進党出身者のうちリベラル派を排除するという発言)を持ち出さなければ、結果がどうなっていたか分からない。政権を取ったかどうかは別にして、自民党はかなり議席を減らした可能性がある。

インタビューの中で安倍さんはこう語っています。
「小池さんにやられた、と思いましたよ。私の解散表明よりも、小池さんの新党に世の中の注目が集まってしまった。これは大変なことになったと思いましたね」
「下村博文元文部科学相は、私の解散表明の記者会見直前に、『総理、解散やめてください』と言ってきました。でも、解散の流れはできていたので、『今さらやめられないよ』と」
「下村さんは『このまま突っ込んだらみんな落ちます』と言うので、正直根拠はなかったのだけれど、『大丈夫だから、私を信じてついて来なさい』と突っぱねたのです。あの時は必死でしたよ」
ここがインタビューの中で、安倍さんが最もヒヤヒヤした感じを出した部分でした。