公明党に対する安倍元首相のあまりにも正直な本音
──自公連立に関する安倍さんの語り口はあまりにも正直で衝撃を受けました。「公明党が自民党の候補に推薦を出すと、どっと支持が増えるのです。推薦が出る前と比べると、2割くらい上がる」とか、創価学会の幹部から「総理どうです? 相当上積みしたでしょう?」と言われた話もありました。その後、安倍さんと宗教の関係に恨みを抱えた若者に銃撃されるという形で凶弾に倒れたことを考えると、この発言は印象深い。安倍さんは公明党や創価学会をどう見ていたのでしょうか。
橋本:自民党単独の政権ではなくて、連立を組まなければならないという背景が前提にあります。単独でやると自分の考えに凝り固まり幅広く考えることができなくなる。公明党が自民党に対するブレーキ役になることができる。これが連立政権を推す人の積極的な考え方ですが、安倍さんは自公連立の関係を、そのように積極的に受け入れる気持ちではなかったと思います。
しかし、公明党との連立で選挙では2割も得票を伸ばすことができる。この2割は創価学会をバックにしているので計算可能な確実な上積みです。こんなにありがたいことはない。一方で、安全保障に関することや、内閣法制局長官を代えた時の集団的自衛権の一部見直しなど、公明党がブレーキ役になってしまう。
そこで、「安倍にいやいやそうさせられた」と山口那津男公明党代表が、党内や創価学会に説明がつくように、安倍さんは時にあえて強引に自分の考えを押し進めました。これは何も対公明党ばかりではなく、いろんな相手に対して、相手の立場も考えたうえで安倍さんが戦略的にやっていたことです。
──内閣人事局について問われ、「内閣人事局ができたことで、官僚が怖がっているとか、委縮しているといった指摘がありますが、我々議員は選挙を経ているのだから、決めた方針に従ってもらうのは当然ですよ」「内閣人事局があって初めて政治主導が実現するのです」と安倍さんは答えています。霞が関のコントロールに乗り出していったことが安倍政権の強さの重要な要素だったと思われますか。