29年ぶりに帰国

 1980年、突然、伊藤の生存が発表され、マスコミは大騒ぎになった。そして9月、伊藤は29年ぶりに車椅子姿で帰国した。獄中生活と文化大革命時代の迫害で67歳になった彼の体はボロボロだったという。

北京で死んだ徳田球一を忍ぶ伊藤律(右。写真:橋本 昇)
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 後日、多磨霊園に眠るかつての同志の墓に伊藤の姿があった。

 墓参りをする彼の胸中に去来したのはどんな思い出なのだろうか?

 伊藤の広い額に浮き出た血管にレンズを向けながら、若い頃の彼の姿に思いを馳せていた。

北京から突然帰国し、同志の眠る多磨霊園へ墓参りに訪れた伊藤律(写真:橋本 昇)
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