「500円ランチ」が人気(写真提供:日本ケンタッキー・フライド・チキン)

(河野 圭祐:経済ジャーナリスト)

「チキンブーム」の中で抱えていた王者KFCの課題

 ここ数年、“チキンバーガー”のプレーヤーが増えてきた。たとえばワタミが運営する、韓国のフライドチキンブランド「bb.qオリーブチキンカフェ」やロイヤルHD系の「ラッキーロッキーチキン」、鳥貴族HDが手がける「トリキバーガー」など新規参入が相次いでいる。

 そんな中、チキンのスペシャリストといえば1970年に1号店を出した日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下KFC)だが、同社の取締役常務執行役員で最高ブランド責任者(CBO)兼特命担当の中嶋祐子氏は、チキンブームの現状をこう見る。

「米国やカナダではチキンバーガー戦争の様相になった時期もありましたが、日本では競争といってもまだごく小さい市場の中での戦いです。ただ、外食業界全体で考えると、バーガー市場において各社より新商品が投入され、世間で注目を浴びて盛り上がるのは非常に嬉しいことです。業界全体で活気を生み出し、食を通じてもっと人々を元気にしたいです。

 当社でもオリジナルチキンのメニュー拡充のほか、バーガー商品も次々と投入しています。でも市場にはビーフなどチキン以外でも魅力的なバーガーが多くあり、私たちもまだまだ工夫と進化が必要だと思っています。チキンのスペシャリストとして、チキンバーガーのおいしさを熱量をもってしっかりと伝え、いかに消費者を振り向かせるかが今後の課題です」

日本ケンタッキー・フライド・チキン 取締役常務執行役員 CBO 兼 特命担当の中嶋祐子氏(撮影:横溝敦)

 振り返ると、KFCはクリスマスなどの特別な日にファミリーサイズの商品(バーレル)を買い、パーティーなどで家族や仲間と賑やかに食すシーンが圧倒的に多かった。消費者にとっていわば“ハレの日商品”というイメージが定着していたが、その強みは日常使いの選択肢から外れるという弱点にもなっていた。

ケンタッキーの定番商品、オリジナルチキン(写真提供:日本ケンタッキー・フライド・チキン)

 日常使いが伸びず、業績も足踏みしていた2017年ごろ、日本KFCはテコ入れを迫られる。そこで翌2018年4月、マーケティング部の責任者として招聘されたのが前出の中嶋氏だ。同氏は外資系広告代理店を経て、2012年からKFCブランドのフランチャイザーであるヤム・ブランズのアジア部門でブランドマネジメントを担当、その実績が買われて日本KFC入りしている。