2022年2月3日、宇宙開発企業のスペースX社が49基のスターリンク衛星を打ち上げた。
そのうち40基が、打ち上げ時に太陽の表面で起きる大爆発、すなわち「太陽フレア」が地球上に引き起こした「磁気嵐」の影響を受けて大気圏に再突入・損失する事態が発生した。
地球は大きな磁石のような性質がある。
宇宙空間で地球の磁場が及ぶ範囲のことを地球磁気圏といい、太陽や宇宙空間からやって来るプラズマを防ぐバリアの役割をしている。
しかし、強い磁気を帯びた「太陽風」に地球の磁気バリアが何時間もさらされると「磁気嵐」が発生する。
太陽風や磁気嵐は、人工衛星のコンピューターに影響を与え、通信障害などの原因になる。また、地上でも送電施設に影響を与える。
過去には大停電を起こすなど、太陽フレアが地球に様々な影響を及ぼしている。
2012年5月17日、京都大学の研究グループは、人工衛星を使って銀河系の中にある太陽と温度や大きさがほぼ同じ8万個の星について、光の強さを3か月観測した。
その結果、太陽フレアと呼ばれる太陽表面の爆発現象よりも100倍から1000倍、規模の大きな「スーパーフレア」という爆発現象が114個の星で合わせて365回観測されたことをメディアに公表した。
研究グループは、もし太陽でスーパーフレアが起きれば、強いエネルギーの様々な粒子が地球に降り注ぎ、世界各地で停電や通信障害が起きるおそれがあるほか、飛行機に乗っていると深刻な放射線被曝の危険もあるとしている。
京都大学付属天文台台長の柴田一成教授は「これまではスーパーフレアは起きないと考えられてきたが、今回の観測で起こる可能性があることが分かった。さらに詳しい研究が必要だ」と述べた。
本研究成果は、科学誌「Nature」に発表された。
さて、近年、古い樹木の年輪や古文書などの研究から、近代以前の時代に桁外れの規模の「スーパーフレア」によるとみられる超巨大な太陽嵐が何度も地球に襲来していたことが分かってきた。
そうした太陽嵐によってデジタル社会を支えるインターネットが寸断されたり、人工衛星にトラブルが生じる恐れがあることから、太陽フレアの発生を正確に予測する試みなどが進んでいる。
総務省は、宇宙天気予報(宇宙天気を観測・把握し、それに伴う影響を予測して、地球上の天気予報と同じように予報する)に関して観測・分析能力や対処の在り方などを検討するため、2022年1月から「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」を開催している。
そして6月21日に報告書を公表した。
報告書では、「極端な宇宙天気現象がもたらす最悪のシナリオ」を策定し、「通信・放送・レーダー」・「衛星測位」・「衛星運用」・「航空運用」・「電力分野」に甚大な被害が生じると警鐘を鳴らしている。
本稿は、地球に甚大な被害をもたらす太陽フレアの脅威とその対策について取りまとめたものである。
初めに、太陽フレアの脅威について述べ、次に太陽フレア対策について述べ、最後に宇宙天気現象がもたらす災害への対処の在り方について提言をのべる。