中東歴訪でアラブ首脳会議にも出席したジョー・バイデン大統領。隣はサウジアラビアのムハンマド皇太子(7月16日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国のジョー・バイデン大統領は7月13~16日の日程でイスラエルとサウジアラビア(以下、サウジ)を訪問した。大統領就任後、中東を歴訪したのは初めてである。

 中国とロシアへの対応に追われる中で、中東の優先順位が下がっていたのは否めない。

 バイデン大統領の今回の中東訪問は、サウジが主導する石油輸出国機構(OPEC)から増産の確約が取れるかが注目されたが、原油輸入の約9割を中東に依存する日本にとって、中東の長期的な安定は極めて重要である。

 アラブの盟主を自任するサウジとイスラエルは敵対関係にあったが、イランの脅威封じ込めという共通の目標を持つ中で、近年は関係正常化の動きを進めている。

 米国には、こうした動きを後押しし、中東地域の安定を構築することを期待したい。

 さて、バイデン大統領の中東訪問の成果について、各種メディアは、バイデン米大統領は看板政策に掲げる「人権」に目をつむる形でサウジを訪問したが、最大の目的だった原油増産の確約が得られなかったと否定的な評価をしている。

 本当にそうなのか。

 筆者は、今回のバイデン大統領の中東訪問のねらいは次の3つであると見ている。

1つ目は、中東の産油国の首脳らとの会合に臨み、原油の増産を呼びかけること。

2つ目は、核開発などをめぐって対立する対イラン包囲網を強化すること。

3つ目は、「イスラエルの中東地域への統合」を進めること。

 本稿では、これらの狙いが、どの程度達成できたかを明らかにしたい。

 以下、初めに、バイデン大統領の行動概要を述べ、次に、3つの狙いの達成度について述べる。