(3)人工衛星の保護対策

 太陽フレアに伴って発生する太陽放射線の影響は、1990年代の中頃から、人工衛星に現れ始めた。

 極度に集積され高性能になった宇宙部品が、太陽放射線の影響で壊れたり、永久故障した人工衛星も多くある。

 光や電波で太陽フレアの発生はいち早く察知できるが、その後2~3日で、磁気嵐を引き起こす太陽嵐(プラズマ)が地球に押し寄せて来る。

 既述したスターリンク衛星40基の損失も、実は打ち上げの数日前に太陽フレアが発生しており、もし衛星への影響を正確に予報ができていたならば、打ち上げ日をずらして被害を避けられた可能性もある。

 対策としては、次に4つが考えられる。

①衛星の打ち上げを延期する。ただし、宇宙天気予報の精度が必要である。

②衛星の高度が下がった場合はリブーストにより高度を上げる。ただし予備燃料が必要である。

③衛星の喪失に備えて代替衛星を準備する。ただし、予算を確保する必要がある。

④衛星をセンサーで監視・操作し、故障を予防する。このセンサーは現在研究・開発中である。

 総務省は2021年度から産学官連携で人工衛星の故障を予防するサービス開発に乗り出す。

 衛星は宇宙放射線を受けて帯電が続くと部品が壊れやすい。新型センサーで状態を監視し、故障しないように衛星を操作する。

(出典:日本経済新聞2021年9月16日)