「今ごろ日教組でもそんなこと言わねえぞ」

 子どもの虐待に関しては、特に国会で成立した「こども基本法」や、参院で審議される「こども家庭庁設置関連法」法案でも議論されていますが、現在の公教育に関する議論で「ゆとり」か「詰め込み」かなんて、もう誰も話題にしてないんですよ。いつの時代の話だ、と。

 子どもの教育データの利活用で、これまで学校が暗黙的に承知していた子どもの資質・能力だけでなく、子どもの気分など内面についてや夫婦仲の状態、生活保護世帯かどうかなど、経済問題を含めた家庭の事情をデータ化して本当に大丈夫なのかという観点のほうがよほど問題です。

 先ほどの記事で、前川さんは「ゆとり教育批判」を背景に最新の学習指導要領を批判していますが、このような与太話をするのは、単純に今まであまり教育の現場を見ておらず、これら学校でのICTの利活用状況や、それに伴う個人情報保護の枠組みを踏まえた最新の教育政策の議論を、きちんとフォローアップできていないからではないかと思います。

 また、前川喜平さんは探求型授業やアクティブラーニングについて、教育指導要領の中身に沿ってこんなのいちいちやってたら授業量が多すぎて、「日本中の子どもたちにとっては詰め込みすぎで、学習も頭のなかもパンクしちゃう」とか書いています。たぶん公教育の実情を知らんのか、あるいは状況認識が古すぎてついてこられてないんじゃないかと思うんですよね。

衆院で開かれた加計学園問題などの集中審議で証言する前川喜平氏(写真:つのだよしお/アフロ)

 全国学力テスト上位の秋田県で言うならば、秋田県教育委員会が謎の頑張りを見せて、「教職員が実感できる多忙化防止計画」を早期に策定し、教師の働きすぎをどう是正するか検討を重ねてきています。首都圏や近畿圏では、特に親の共働きに伴う初等中等教育における放課後の子どもを預かるための学童保育をどうするのかの方が課題になっておるわけです。

 学校単位でやる部活動が教職員や通う子どもに対する負担となるから地域単位で子どもを預かる仕組みを作らないといけないとか、「今ごろ日教組でもそんなこと言わねえぞ」という議論をしているのが前川喜平さんじゃないのかと感じる部分はあります。

秋田県の子どもの学力が「13年間連続トップクラス」なワケ(https://diamond.jp/articles/-/283900)

 秋田の教育は凄くて大変優れた生徒を育てるし、秋田大学や国際教養大学など良い高等教育もできて先進県になって凄いとみんな思っています。ただ、その結果として、いい人材育てても秋田に仕事がないからみんな仙台や札幌や東京で就職するため流出しちゃうのは、非常にもったいないと思うんですよね。