大炎上発言を被弾した吉野家(写真:西村尚己/アフロ)

(山本一郎:次世代基盤政策研究所理事)

 牛丼チェーン「吉野家」の常務による、早稲田大学の社会人大学院での不適切発言が大炎上しています。やりおったか。確かに表現を見れば、若い女性を薬物に依存させるかのようなブランド論を展開したわけですから、女性蔑視だと怒る受講生が出るのも、まあ分かります。

 しかも、日本企業のドメスティックな体育会系の人たちがうっかり口を滑らせたのではなく、世界的な製造業で、シンガポールのマーケティング責任者まで務めた大物マーケターの発言でしたから、その潜在的な女性蔑視や顧客軽視の姿勢を日本文化の後進性になすりつけるわけにもいかず、なかなか素敵なことになりました。

 実際、ハイエンドなマーケティング会社では、当たり前のように、こういう表現を使ってるんですよね。

 私もご一緒しているマーケ屋さん、大変高い給料を取っておいでですが、社内掲示板で普通に「高級な体験を求める顧客は寄ってたかってレイ〇する」とか「競合が出てきたら早く殴って血〇りにする」とか「安い客に食わせるエサ(懸賞)は海外からきたゴミでいい」などの文言が並んでいます。不穏当!不適切!でも、そういう表現で簡潔に伝えることが良しとするコンサルタントが多いのも、また事実だと思うんですよね。分かりやすく、また露悪的だという。

 実際、本件を告発した女性受講生のフェイスブックを見物に行きましたが、「うわ、フェミやんけ」と思うような御仁でもあり、これはまた見事に地雷を踏んだという以外の表現が思いつきません。

 そもそもマーケティング用語って、不穏当なものばかりなんですよね。

 例えば、当たり前のように使う「囲い込み」。消費者を囲い込み、自分たちのビジネスで生み出した財やサービスを繰り返し使ってもらえるような状況を作るという言葉です。でも、消費者の側からすれば、囲い込まれていると気づいた時にどう思うでしょうか。

 または、ネットでもよく使う「ターゲティング」。これ、射撃の的(マト)だよねえ。要は、ビジネスのスコープに入ったお客さんだけに、効率よく情報提供できるような広告などの仕組みを考えることです。見込み客を撃っちゃうわけですよね。

 今回は、米日用品大手のプロクター&ギャンブル(P&G)の有力マーケターが現場を上がって大学で教えたり、上場企業の社外取締役をやったり、アクセンチュアなどの大手コンサルタント会社の顧問的な活動をやったりと、各方面で活躍し、調子に乗ったところを伏兵のフェミニストに撃たれて炎上したという案件ですが、それもむべなるかなとも感じます。