対戦車ミサイル「ジャベリン」。ウクライナ・ロシア戦争では、携帯用対戦車ミサイルが大活躍した(提供:U.S. Marine Corps photos/Abaca/アフロ)

 北朝鮮の消息筋によれば、北朝鮮は現在、現代戦で効果的に活用できる実戦的な軍事力の増強と備えを急ピッチで進めようとしている。そのベースとなっているのは、ロシア・ウクライナ戦争におけるロシアの前線に派遣された北朝鮮軍事観戦団からの報告だ。

 北朝鮮は、今回のロシア・ウクライナ戦争でウクライナが「軍事強国」であるロシアに対抗できた要因を米国の軍事情報力と分析している。

 軍事偵察衛星を通じて米国が入手したロシア軍のリアルタイム情報をウクライナに提供したことが、戦況に与えた影響は大きい。米国の第3世代赤外線誘導方式の対戦車ミサイル「ジャベリン」と携帯用地対空ミサイルである「スティンガー」も、ウクライナ健闘の一因だ。

 北朝鮮軍はこういった情報に基づき、実戦における軍事力の増強と備えに力を入れている。北朝鮮はどんな準備をしているのだろうか。ロシアの北朝鮮大使館に多くの知己を持つ郭文完氏の寄稿の3回目。

◎1回目「対内文書が明らかにした、ロシア・ウクライナ戦争で金正恩が中露に感じた恐怖」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69767
◎2回目「ウクライナ戦争、開戦4日後にロシア支持に転じた金正恩がロシアに求めたもの」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69768

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 今回のロシア・ウクライナ戦争で北朝鮮が痛感したのは、米国の軍事偵察衛星の怖さだ。

 現代戦では、敵軍の位置と移動経路をどれだけ早く、正確に感知し、対処するかによって、勝敗が決定されると言っても過言ではない。事実、ウクライナが米国からロシア軍の正確な位置情報を受け、効果的に対処した結果、大きな戦果を上げた。

 現地に派遣された観戦団から報告を受けた北朝鮮は、米国の軍事偵察衛星を欺くために、次のような対策を進めている。

北朝鮮軍が始めた偽装用模型兵器の生産

 まず、軍の兵器と装備品に対する偽装だ。

 北朝鮮軍は、米国の軍事偵察衛星に自分たちの武装状態と移動経路に関する情報を誤認させるため、各軍の部隊がそれぞれ保有している兵器の偽装を本格的に進めている。ここで言う偽装とは、模型の作成である。

 現に、北朝鮮軍総参謀部から全軍の部隊に、木とプラスチックで1/1スケールの偽装用兵器を作るよう指令が出た。模型に塗装と迷彩ネットで本物の兵器のように偽装しろという話だ。

 北朝鮮軍の各部隊は偽装用の模型兵器を作成。総参謀部がその出来映えを検査・判定している。