ウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスクにある露石油パイプライン運営会社トランスネフチの石油貯蔵施設では25日未明、大規模な火災が発生。暗号化メッセージアプリ「テレグラム」に投稿された動画にはミサイルが飛んでくるような音と強力な爆風が記録されていた。
同日、セルゲイ・ラブロフ露外相は「第三次大戦が勃発する現実的な危険がある。ロシアは核戦争を何としても防ぐという原則を守るために多くのことをしている」と警告した。
「ウクライナの大砲がロシア軍部隊を破壊した」
戦争は明らかに新たな段階に入った。冒頭、紹介したRUSIのワトリング氏らはウクライナ政府高官や将校、同国や西側の情報機関関係者、ロシアの戦略産業元従業員を含むエネルギー専門家、ロシアとの連絡を保つ北大西洋条約機構(NATO)加盟国や非加盟国の外交官や国家安全保障担当者と面談、現地調査で戦場から回収したロシア軍の装備品、膨大なロシア政府内部の漏洩資料を分析した報告書『作戦Z』を4月22日に公開した。
陸戦でロシア軍が大打撃を受けた理由について「対戦車ミサイルはロシア軍の動きを鈍らせたが、彼らを殺したのはわれわれの大砲だった。これがロシア軍部隊を破壊した」(ウクライナ軍司令官顧問)という。通常ロシア軍の重装備を運ぶ鉄道輸送が使えず、利用できるわずかな道路も交通渋滞で物資を運ぶのは困難だった。キーウを攻撃できる状態になった時にはすでにキーウを攻略するのに十分な戦闘力を失っていた。
ロシア軍は5月9日の「勝利宣言」という所期目標を達成するため、キーウ攻略を断念、戦力を東・南部に集中させたが、戦闘能力不足は解消できていない。チェチェン紛争やシリア軍事介入を指揮し「シリアの虐殺者」と恐れられるロシア軍南部軍管区トップ、アレクサンドル・ドボルニコフ上級大将がウクライナ侵攻を統括する総司令官に任命され、夏に向け部隊を増強する。主導権はプーチン氏の出身母体FSB(連邦保安局)から国防省に移った。
ロシア内部で戦争のとらえ方も変遷した。
3月24日、ブリャンスク州知事は「ロシア軍は多大な人的損失にもかかわらず大祖国戦争(1941~45年)の英雄たちの偉業を再現してウクライナの秩序を回復し続けている」と宣言。「砲撃や空爆があった場合の学生や従業員の行動手順について教育機関で説明会を実施する」「愛国的組織とともに公的な地方防衛分遣隊の編成に関する準備作業を行う」ことを地方当局に指示した。