4月27日、サンクトペテルブルクで議員らを前に演説するロシアのウラジーミル・プーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]キーウ(キエフ)を陥落できずウクライナ東・南部に戦線を集中したウラジーミル・プーチン露大統領。当初予定していた5月9日の対独戦勝記念日の「勝利宣言」をあきらめ、「特別軍事作戦」を「戦争」に引き上げる可能性が出てきた。夏ごろにウクライナにとどめを刺すためだ。

 シンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所」(RUSI)の陸戦専門家ジャック・ワトリング研究員らがまとめた報告書『作戦Z 帝国の妄想がもたらす断末魔の苦しみ』をもとに報告する。

(参考)https://static.rusi.org/special-report-202204-operation-z-web.pdf

西側諸国も見据える戦争の「長期化」

 ボリス・ジョンソン英首相はウクライナへのスターストリーク対空ミサイル、対戦車ミサイル800発など1億ポンド(約160億円)の武器供与を発表した翌日の4月9日、ウクライナ国民との「連帯の証」としてキーウを訪問、「ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の断固たるリーダーシップと、ウクライナ国民の無敵のヒロイズムと勇気」を称賛した。

 装甲車120台と対艦ミサイルシステムの供与と、融資保証が総額で7億7000万ポンド(約1240億円)に達することも明らかにした。

 4月22日、訪問先のインドでは戦争が来年末まで続く恐れがあることに同意するかと尋ねられ、ジョンソン氏は「悲しいことだが現実的な可能性だ」と述べた。英政府は間もなくキーウの大使館を再開する。

 アメリカからもアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官が24日、キーウを電撃訪問。アメリカも外交官をウクライナに戻す。バイデン政権になって同国への安全保障支援は総額43億ドル(約5520億円)にのぼる。