また、筆者は所属した補給処の記念式典に招かれて行ったことがある。
観閲指揮官が乗車するときは傍に控えた隊員が整斉と踏み台を運んで置き、黒系統に統一した背広や女性事務官・技官までもが観閲行進に参加したのには吃驚した。パレード自体は「素晴らしい」の一語である。
しかし、補給処の自衛官はともかくとして、事務官や技官は兵器・装備の補給や整備の専門家であり、また数多ある駐屯地の建造物や上下水道、電気などの工事、あるいは医薬品の管理などに従事し、女性事務官らは隊員が着用する衣服の補修などで働いている。
筆者の在勤間にはカンボジアPKO(2次隊)の派遣があり、女性事務官らは夜を徹して隊員数百人の戦闘服などに「Japan」や部隊の識別章などを縫い付ける仕事に追われていた。
こうした事務官・技官らが観閲式の行進に駆り出されたわけである。その指揮官は4か月後には師団長に補職される人物で、補給処長はつなぎの補職というわけである。
この間の補給・整備率が60~70%台であったと後日仄聞した。
短期間であり、しかも平時であることから免責されたのであろうが、兵站を理解しない人事がいかなるものであるかの端的な証左でもあった。
おわりに
本文では戦争に出現する兵器・装備の一端について概見した。普段の努力とともに、最新兵器ばかりに目を奪われるのではなく、該国の実際の装備状況に目を光らせる必要があるということである。
年末までに安全保障関連三文書の改訂が予定され、既に作業は始まっていると仄聞する。現実を直視した文書となることを期待する。
ウクライナで起きている戦争は今後の国際情勢に大きな影響を与えるに違いない。中でも、国家の安全をいかに確保すべきか。政治のあり様、国民の意識、自衛隊の装備などで考える要素を提示している。
ウクライナ(ばかりではないであろうが)の多くの家庭は防空用に地下室を備え、そこには多いところでは約1か月分の非常用糧食などを準備しているとのことである。
包囲されているマリウポリからの退避者の一家族は、インタビューで15日ぶりに地下室から出てきたと応えていた。
多くの地下鉄駅などは住民の退避場所になっている。ソ連に組み入れられた当初から、政治も国民も今日のような状況がいつ発生してもおかしくないと考えていたに違いない。
ウクライナなどの東欧圏ばかりでなく米国などでも地下室を備えている家庭は多い。ましてや、公共施設として核シェルターなどの設置は言うまでもない。
近隣には大量破壊兵器の恫喝・使用を厭わないと思われる国がある。改訂文書ではこうしたことに対する現実的な施策も必要ではないだろうか。