禁止兵器の登場
核・生物・化学兵器は大量破壊兵器(WMD:Weapon of Mass Destruction)にカテゴライズされ、条約によって保有や使用が制限され、あるいは禁止されている。
特にソ連時代に所在した核をウクライナから引き上げ、核不拡散条約に加盟するに当たって、ロシアは米英と共にウクライナに安全保障を提供する(ブタペスト覚書)とした。
今回は安全保障を提供すべきロシアが逆に核でウクライナを恫喝するという逆転した姿勢を見せたわけである。
また、自国が使用の恫喝をしておりながら責任を転嫁するため、ウクライナに原発施設や核にかかわる研究所があることを理由に、あたかも核(物質)の「使用」を意図しているかのように宣伝し、自国の「予防的」あるいは「先制」使用を正当化する意図が見え見えである。
また、ウクライナが生物兵器や化学兵器を使う準備をしていると喧伝し、ロシアが使用した場合の責任をウクライナに転嫁する偽旗作戦にも注力している。
戦線の膠着やキエフでは一部撤退が報道される中で、化学兵器には指定されていないが危険な白リン弾を露軍が使用したことが報道されている。
露軍は戦争が始まった早い段階で、クラスター弾を使用したとも報じられた。
非人道兵器として対人地雷と共に禁止する国際条約が存在する。ただ、ロシアや中国、米国などは参加していない。
露軍に見られる戦略の破綻
当初はロシアと国境を接する東部2州を独立させ、あるいはその後にロシアに併合するのを目標にすると見れたロシアであった。
しかし、実際は東部に加え、演習と称して展開していた南部のクリミヤ半島と北方ベラルーシの3方面から10万~15万人の兵力で一気にウクライナに侵攻を開始し、現政権を倒して親ロ政権樹立を目指すようであった。
わずか10万前後の兵力で、4000万人のウクライナを制圧するのは無理というものであるが、絶対権力者たるプーチンの満々たる自信(過剰)が、進言しようとする将軍たちの口をつぐませたのかもしれない。
国内の兵力状況やウクライナの対応ばかりでなく、理不尽なウクライナへの侵攻に抗議する国際社会の動きの見誤りも重なったようだ。
国際社会は各種レベルで一致団結してロシアに制裁を掛けると同時に、ウクライナに兵器・装備などの支援をし続けている。
西欧諸国からの兵器を即座に戦場で使うなど、ウクライナ将兵のレベルの高さが相当なものであることも示している。