ポーランドに配備されている米陸軍の「M2ブラッドレー戦闘車」(1月22日撮影、米陸軍のサイトより)

 ITやコンピューター技術の発達によって、宇宙空間までも活用する監視、情報、通信システムが普及した。

 軍隊の運用にもこうした最先端のシステムが取り入れられ、21世紀の戦闘様相は戦車や艦艇、戦闘機などのハード兵器が直接相まみえる前に、情報・指揮・通信機能を破壊する宇宙・サイバー・電磁波(通称ウサデン)が重視され、ハード兵器の対決前に決着するのではないかとさえ見られるまでになってきた。

 加えて、日本は専守防衛という建前をとりながらも国土の縦深性がないために、敵が上陸する前の海空域で撃破する戦略を良しとして、海・空自衛隊の兵器・装備を重視する方向に向かった。

 この結果、陸上自衛隊の主要兵器であった戦車や火砲は、防衛計画の大綱が改訂されるたびに削減され、冷戦終結前は1000両・1000門を超えて装備されていたが、現在では300両・300門前後である。

 首都防衛の要として存在し、第1師団の象徴的存在であった第1戦車大隊も3月17日に約70年の歴史を閉じた。数年以内に北方と西方を除く本土からは戦車がなくなる。

 陸上自衛隊のその他の兵器も軒並み削減の影響を受けてきたことは言うまでもない。

 このため生産基盤の維持というシンボリックな意味だけで企業経営は困難として、陸戦兵器の製造に熱意を注いでいた有力企業でも防衛産業から手を引く状況が出来した。

 しかし、いまウクライナで起きている戦争で目にし、世界の世論に訴え、戦線を支配しているように見えるのは、戦車や装甲車、対戦車砲や対戦車ミサイル、対空ミサイルなどの従来から重用されてきた陸戦兵器である。

 短兵急に結論を出すわけにはいかないが、主要都市の攻略では在来の陸戦兵器が依然として活躍していることが確認されつつあるのも事実ではないだろうか。

カタログ性能を求めたがる日本

 戦後の日本は戦争を経験していない。その意味で「自衛隊は戦争抑止に貢献している」というのはあながち間違った見方ではない。

 しかし、戦争していないゆえに、兵器・装備の研究開発、調達・装備においては敵性国家になりそうな国の兵器・装備に関する情報を軽視し、世界最高(いわゆるカタログ性能)の兵器・装備を取得しておれば問題ないといった意識が強く出る雰囲気があった。

 冷戦時代はソ連の脅威があり、北方からの侵攻が危惧されていた。その場合の撃破対象となるのは、ソ連陸軍装備の「T-64」、「T-70」戦車や「BTR-60」装甲車などが主体であった。

 しかし、陸幕防衛部や装備部から(筆者らの)情報部への要求は米国の新戦車(M-1)の性能諸元はどうか、西ドイツ(当時)はどうか、などが主体で、ずばりソ連の戦車などについてではなかった。

 要するに、日本の兵器・装備についての研究・開発・装備は直接対峙する相手国の状況ではなく、米国や西独などはソ連を相手にした戦車などを開発しているであろうから、米独と同等かそれ以上の兵器を開発しておけば十分という憶測に基づく間接的なものであった。

 しかし、現実に使われる兵器は戦場となる国土の地形や気象、植生に大きく影響される。実際、欧州と日本では地形が抜本的に異なり、日本は山岳地帯が多く平坦部は少ない。