欧州の平坦部で運用される兵器が山岳地帯の多い日本で運用されるとは限らない。
従って、カタログ性能を求めるのではなく、相手が実戦で使用する兵器情報を第一に収集し、それに対抗できる兵器を研究し、開発・装備すべきなのである。
ソ連製兵器を装備したアラブ諸国はイスラエルと何度も戦火を交えた。ソ連製鹵獲兵器がイスラエル、さらには米国などには保管され、性能・諸元等も調べられている。
それらの兵器情報を優先すべきではないかという建言も聞き入れられず、そのための予算などが付くはずもなかった。
結果的に、日本は世界の最先端兵器を備えることにつながったが、重すぎて橋梁通過などが不可となり分解搬送を強いられる代物となった。
万一、ソ連が上陸してきたとき、現場で組み立てなければならない兵器が役に立つだろうか。
自衛隊がPKOに派遣される様になって以降は「機能する自衛隊」と呼ばれ実用性が重視されるようになるが、それ以前は「存在する自衛隊」であったから、現実とのギャップが見えなかっただけである。
在来兵器のオンパレード
ウクライナで起きている戦争を見ると、最新兵器ばかりが登場するわけではない。
最新兵器は将来の傾向を示し研究開発の示唆となるが、実際に運用される兵器の大部分は半世紀も前に開発装備されたような在来兵器がほとんどである。
3月19日、ロシアが極超音速兵器を使用したとの報道があった。
しかし、戦争開始から1か月以上が過ぎた今日まで、世界の目に留まったのは爆弾や戦術ミサイル、戦車や大砲といった在来兵器ばかりである。
最近はウクライナ東部の要衝マリウポリ陥落を早めるために艦砲射撃や艦上からのミサイル攻撃も加わったといわれるが、いずれにしても在来兵器ばかりである。
戦争指導や作戦立案などに偵察衛星や宇宙通信システムが活用されているのは紛れもないが、戦争の悲惨な状況は爆撃やミサイル攻撃、あるいは戦車の突進や大砲の発射などからしか感得されない。
現実に住民を混乱させるのは、こうした戦術兵器による破壊である。
日本の場合は防衛予算が他の先進国に比して対GDP(国内総生産)比換算で半分くらいのため、新兵器に目を向けると在来兵器を削減せざるを得ない状況にあったという以外にない。