本件の刑事裁判が集中的に開かれていたこの1週間、ウクライナでは砲撃が激しさを増し、多くの市民が突然、理不尽に命を奪われるニュースが繰り返し報じられていました。

 幼い我が子の命を奪われ、「守ってやれなかった……」と嘆き悲しむ親たちの涙をとらえた映像はあまりにも辛く、「これが今、現実に地球上で起きているのだということが信じられない」といったコメントもたびたび耳にしました。

 しかし私は、今回の裁判を傍聴しながら、安全であるはずの日本で暮らしていても、ごく身近な道路上で、まさに「戦争」と同じことが起こり続けているのだということを痛感しました。

「赤信号の殊更無視」が引き起こした死傷事故に対する判断は

 11歳の耀子さんは、ルールを守って青信号で横断歩道を渡っていました。それなのに、前方の駐車車両を避けるため、「信号の変わり目を利用して車線変更をしてしまいたい」との身勝手な動機から、赤信号と知りながら時速57キロで交差点に進入してきた被告の車に衝突されたのです。

 フロントガラスはめちゃくちゃに壊れていました。耀子さんの致命傷は首の骨折だったそうです。

自身の名前の刺繍が入ったお祭り用の半纏を身にまとった耀子さん(遺族提供)

 青信号の横断歩道は、歩行者にとって安全地帯であるはずです。そこへ突然突っ込んでくる鉄の塊は、まさに無差別の爆撃を受けるのと同じです。

 本件の「殊更赤信号無視」は、果たして「危険運転致死傷罪」に当たるのか、否か。そして、量刑は……。

 判決は3月22日15時に、東京地裁で下されます。