父・暁生さんとツーショットに納まるドレス姿の耀子さん(遺族提供)

(柳原 三佳・ノンフィクション作家)

「今日は耀子(ようこ)の命日です。2年前の3月14日から耀子に会えていません。あんなにも毎日一緒だったのに、突然の別れとなりました。目が覚めたら、毎朝耀子がいない世界を感じます。夢を見て、自分の泣き声で目覚めることもあります……」

 2022年3月14日、東京地裁422号法廷――。

 証言台には、奇しくも娘の命日に、遺族としての心情意見陳述を行う母の姿がありました。

まともな謝罪もない被告に収まらない憤り

 正面には3人の裁判官、その両側に計6名の裁判員、後席には2名の補助裁判員が座っています。

「殊更に赤信号を無視した」として自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)罪で在宅起訴された元配送業の高久浩二被告(69)は、背を丸め、終始うつむいています。

 母の陳述は、時折言葉を詰まらせながらもこう続きました。

「耀子は、私たち夫婦のたった一人の娘で、両祖父母にとってもたった一人の孫でした。最愛の宝物です。犯人は、耀子を身勝手な運転で轢き殺し、私たちの人生も心も殺しました。自発的な謝罪が無いことや、反省していると思えない公判でのやり取りを聞いて、ただただ虚しい気持ちでいっぱいです」

事故2週間前の耀子さん。遺体にはこのサロペットが着せられた(遺族提供)