(朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO)
2月21日現在、ウクライナに対するロシア侵攻の緊迫度が増しています。米国バイデン大統領やブリンケン国務長官が、ロシアのプーチン大統領が「侵攻を決断している」とか、「情勢は侵攻寸前だ」などと、危機感をあらわにする中、20日に終了予定だったウクライナのすぐ北にある隣国ベラルーシとの合同軍事演習後も、ロシア軍がベラルーシ国内にとどまることが発表されました。ウクライナの首都キエフに侵攻することを見据えた配置とも言われています。
日本は、米国の傘の下におり、いわゆる西側諸国側に立つので、どうしても、ロシアの非道を非難するところから情勢を見がちです。かく言う私もその一人で、国際情勢の不安定要因でしかないプーチン大統領下のロシアの動きを問題視しています。しかし、冷静に情勢を分析するには、相手の視点にたってまず考えてみることが重要であることは論をまちません。
そんな中、私は、過去の経験(経産省などにおけるロシア案件の担当)などを通じ、プーチンの動きや決断には、彼の生い立ちや想い、そこにかなり柔道が影響しているとみています。そして、その観点で見ると、当為は別として、現在の情勢はとても良く分かるのではないかと感じています。今回は、柔道とプーチン大統領という観点を軸に、現在の情勢について思うところを略記したいと思います。
日本とロシアの関係、他国のそれとは違う点
日本とロシアの関係は、日中関係や日韓関係などとは異質なもの――。かつて霞が関の官僚としてロシア関係の仕事にかかわっているうちに、私はそのことに気づきました。
資源エネルギー庁の石油・天然ガス課に在籍していた時には、ロシアから中国に引かれる予定が浮上していたパイプラインの出口を、日ロ双方に資するように太平洋沿岸にひっぱって来るという案件を課長補佐として担当していました。また独立行政法人日本貿易保険に出向していた当時は、ロシアのインフラ関係のプロジェクトにファイナンス面で関わりました。
そうした仕事の関係から、ロシアに出張したりロシア人と交渉したりということを繰り返していたのですが、そのときに実感したのが、冒頭に書いた「日本とロシアの関係は、他国との関係と比べて異質」ということなのです。