二国間関係の親密さ・疎遠さを測る一つの目安として、しばしば双方の国民に相手国の好感度を聞く調査が用いられます。例えば日中関係ならば、中国の人に「日本は好きか」というアンケートを、そして日本人にも「中国は好きか」というアンケートを取るという具合です。この場合、結果は不思議とほぼ同じような数字になるのです。日中関係が険悪な時には「嫌いだ」という意見が多くなり、関係が良好な時には「好きだ」という意見が多くなる。これは日中関係だけでなく、どこの国に対してもほぼ同じような傾向があります。つまり、恋愛にたとえれば、「両想い」かその逆、が普通の状態です。

日本人はロシア嫌い、ロシア人は日本大好き

 ただし日ロ関係だけは、これに当てはまりません。日本人が抱いている対ロシア感情は概して良いものではありません。アンケートを取ってみても「信用できない」などといった答えが多くなる傾向が強いのです。しかし逆にロシア人というのは、常に親日感情が勝っている国なのです。大国間の二国間関係では珍しい「片思い」現象が生じています。

 例えば割と最近のものを見ても、令和3年9月の内閣府による「外交に関する世論調査」によれば、「あなたは、ロシアに親しみを感じますか、それとも感じませんか」という問に対して、「親しみを感じる」はわずか1.3%、「どちらかというと親しみを感じる」でも11.8%に過ぎず、「どちらかというと親しみを感じない」が48.9%、「親しみを感じない」は37.4%となっています(無回答0.5%)。9割近い日本人がロシアに親しみを感じない傾向です。

(参考)https://survey.gov-online.go.jp/r03/r03-gaiko/3_chosahyo.html 

 一方、平成30年の外務省の調査(「ロシアにおける対日世論調査」)によれば、45%のロシア人が「日本は信頼できる」と回答し(「とても信頼できる」と「どちらかというと信頼できる」の合計)、71%のロシア人が「日本と友好関係にある」(「とても友好関係にある」「どちらかというと友好関係にある」の合計)と回答しています。

(参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000480987.pdf

 有名人を見ればわかりやすいかも知れません。例えば前回の平昌オリンピック・フィギュアスケート女子で金メダルに輝いたザギトワ選手は「日本大好き」で知られています。日本で合宿をした際に秋田犬の写真を見て大好きになり、それを知った日本側から贈られた秋田犬「マサル」を大切にしているのは有名なエピソードです。

 またやはり平昌で銀メダルを獲得したメドベージェワ選手も『ユーリ!!! on ICE』など、日本のアニメの大ファンで、アイスショーではセーラームーンのコスプレで登場したこともあるほどです。今回の北京冬季五輪のフィギュアスケート女子で金メダルを獲得したシェルバコワ選手はクマ好きで知られますが、リラックマやLINEスタンプのクマのぬいぐるみを愛好していることが伝わります。このようにロシアには親日家が多いのです。