現在は組み手争いの真っ最中
もう一つ、プーチンが直近の状況をどう見ているかについてです。報道を見ていると、現在極めて奇妙な現象が起きています。
ウクライナとの国境付近に、10万人とか19万人とか言われる部隊を集結させているロシアは繰り返し、「攻めない、攻めない」と言っています。わざわざ撤退している映像を世界に流したりまでしています。一方、申し訳程度にポーランドにわずか数千人の部隊を派遣したアメリカのほうが、冒頭にも書いたとおり、連日、「数日中に侵攻してくるはず」などと言っています。
これはあえて隙を見せて相手を幻惑したり、激しく牽制したりというやり取りで、柔道いうところの組み手争いのようなものでしょう。
現代の紛争はハイブリッド戦と言われています。単純に軍隊同士がぶつかり合うのではなく、サイバー攻撃や情報戦、ドローンなども駆使しつつ、時には自ら自陣を攻撃し、さも相手方から仕掛けてきたように見せる「偽旗作戦」まで交えながら波状的に攻撃します。
アメリカもそうしたロシアの行動を把握しつつ、「全部わかっているぞ、もうすぐ侵攻して来るんだろう」と牽制しているわけです。
同時に、ドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパ諸国は、プーチン大統領やラブロフ外相との会談を精力的に重ねるといった外交攻勢をかけている。これもある意味で、ロシアに「攻めさせない、隙を見せない」という攻撃です。
プーチンも前述のように「祖地」を簡単に西側諸国に組み入れさせるようなことは考えていないでしょうから、攻撃の糸口を探すべく、水面下での活動も含め、激しい組み手争いをしている真っ最中なのです。ここまで来てやめるのも、内部的に難しくなっていく中、とっかかりさえ見つければ、一気に行動に出る可能性は高いと思われます。ただ、武道では、ガムシャラな攻撃は却って相手にやられることにもなりかねないわけで、様子・隙を見つつ、というところはプーチンの行動の大原理になっていることでしょう。